
銀座店
なんと奥深い日本の色
帯締めの色、悩みますよね。 それもそうなんです。例えばですが、当店で扱っております定番の冠組だけでもなんと80色あるのです。

帯締めのみならず、和装には微妙な風合いと優美な呼称が付いた様々な色が使われます。
日本人の感覚ってさすがだな〜と思いながら、一体どのくらいの数があるのか、我が国の伝統色、和色についてざっくり調べてみました。
定義的には「日本の伝統色は、日本文化特有の色彩感覚に基づいた色、また過去の歴史資料において出典がある日本固有の伝統的な色名称を含む1100余の色を指す」(ウィキペディアより)とのこと。
なんとその数、1100です!
現在は明治以降に海外から入ってきた化学染料も含め、「色」を工業的に扱うため統一化された基準=カラーコードで統率された色見本や検索エンジンが多く存在しますので、扱われる和色の数はまちまちですが、それでも400〜500はくだりません。当店でも基準にしております和色大辞典には465色が表示されております。
ご参考までに <和色大辞典>こちらから http://www.colordic.org/w
そして和の色は、豊かな風土から生まれた樹木や木花など自然そのものの姿と言えましょう。日本の染織技術は奈良時代にはほぼ完成されていたとも言われ、その足跡が平安時代に編纂された『延喜式』の記述からも垣間見られます。
『延喜式』は律令法の思考細目を集成したもので、当時の衣服裁縫を司る役所に関する記載のうち、「雑染用度」の項に30数種の色名と、それを染め出す原材料と分量、処方が記されています。その中には天皇の許しがなければ身につけられない禁色(きんじき)である深紫(こきむらさき)、深緋(こきひ)、深蘇芳(ふかすおう)、また絶対禁色と呼ばれた黄櫨染(こうろぜん)や黄丹(おうに)などが挙げられています。
これが1000年以上前の事で、すべてが草木染めのレシピ付き!というから驚きですね。
この後、貴族の女性の襲の色、武士の合戦装束などで和色はさらに発展し、ついに庶民も色を楽しめる時代がやってきます。
よく知られているのは江戸時代の町人の間で流行した「四十八茶百鼠(しじゅうはっちゃひゃくねずみ)」です。茶色、鼠色、藍色系のバリエーション色の事で、四十八は文字通りの48色ではなく、"たくさんの" という意味で実際は100以上あったとか。
江戸茶、芝翫茶、千歳茶、銀鼠、梅鼠、利休鼠、鉄紺、浅葱、納戸色と、現在でもおなじみの色々ですね。シブさに注目した江戸っ子の粋とも言えましょう。
そしてもうひとつ、大事なのが名称についてです。
日本の伝統色を前にして、読めない事ってありませんか?
私はしょっちゅうで、これがなかなかに難しい......。
例えばこの「葡萄」というお色。
一般的には「ぶどう」ですが、和色の呼称だと「えびぞめ」と呼びます。
葡萄(または蒲萄)はもともとヤマブドウの古名である葡萄葛(エビカズラ)の事で、エビとも呼ばれました。淡く赤みがかった紫の色調です。前出の『延喜式』にも記述があり、ヤマブドウだけでなく紫根と灰汁と酢を用いて染められるそうです。
これに対し「葡萄色(えびいろ)」という色もあります。こちらはヤマブドウがさらに熟したような色で、葡萄に比べて暗い赤紫の色調です。これが江戸中期頃から現代で言う「ぶどういろ」と呼ばれるようになったとか。
また葡萄がエビと呼ばれた事から、近世では同じ音の海老を連想させるようになり、「海老色」「海老茶」などの色も登場する事になります。
ああ、日本人のこだわりに頭が下がる....!
和色大辞典のカラーサンプル
お色や名称に関しての話題は尽きないので、また別の機会にでも。
皆様もどうぞ和色の探求をぜひお楽しみ下さいませ。
銀座店スタッフ 松浦