あおきDIARY

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銀座店

憧れの名物裂の帯

長雨の後の酷暑、さらなる感染症対策。
いつもと違う夏に戸惑いながら、なんとか生きていると思う今日この頃です。
皆さまいかがお過ごしでしょうか。

先日、涼を求めて立ち寄った小さな沢で、シオカラトンボに遭遇しました。
私を先導するように前を飛び、ちょこんと草上に着地。
季節は動いているんだなと感じた瞬間でした。

またこんな時期、心に涼を運んでくれるのはひとり時間に頂く一服のお茶。

夏のお点前なら洗い茶巾に葉蓋の扱い、お菓子は何にしようかしら...とお稽古風景が浮かびます。
現在はお菓子も個包装でお自服、またリモート授業とお稽古も工夫されているようで何よりですね。

ゆっくりと薄茶を味わいながら頭に浮かぶのは茶室の風景。
湯の沸く音、
床の間の花、
お軸の言葉。

やはり茶室でのおもてなしは気持ちがぐっと入ります。 そして心がけたいのは背筋がピンとなる装い。 それを叶えてくれる私の憧れは、逸品の名物裂の帯です。

名物裂とお茶は切っても切り離せない関係にあります。
高名な茶人が名品と認めた茶器や道具を「名物」と呼びますが、この茶器の仕覆や表装、袱紗などに用いた裂を次第に「名物裂」というようになったそうです。

その始まりは鎌倉時代。禅宗が伝えられた際に、僧侶の袈裟や仏典を包んだ裂地が持ち込まれました。
もちろん日本にも素晴らしい織物はありましたが、見たことのない技法、素材、色やデザインに美意識の高い日本人はどれだけ心を躍らされたことでしょう。

頃は大航海時代、世界からさらに豪華な物品が入り込んできます。
そして江戸中期頃までに中国やペルシア、インド、東アジアなどから膨大な数の裂地が集まり、茶人だけでなく武家、神社仏閣、商人、町人にも珍重される事となります。その数は確認されているだけでも400種以上あるとか。

織の手法では金襴、銀蘭、緞子、間道、錦、印金、風通などがよく知られており、これに「利休緞子」「吉野間道」のように織地の前に作者、所有者、産地、道具などの由来の名称が加わる場合もあります。これに文様の名称も加わるとさらにこだわりが感じられますね。

【帯3393】
有職織物の重鎮、喜多川俵二さんの名古屋帯。
班金という技法を用いて、名物裂牡丹唐草文が浮かび上がって見える複雑味が見事な逸品です。
【帯3392】
初代龍村平蔵の三男である龍村晋さんの袋帯「名物糸屋金襴」。
千利休の門人である糸屋宗有が所蔵した「糸屋裂」に、仏具の輪宝を織りだしている端正な逸品です。
【帯3334】
龍村平蔵製の本袋帯、銘「瓦燈印金錦」。
牡丹唐草文と瓦燈文を大胆に配し、高貴な印金技法の趣と格調高さを表現した重厚な逸品です。

来たるべきお茶の季節を心待ちにしながら、帯を眺めるのもいいものですね。
ぜひ皆様にもお手に取ってご覧いただければと思います。

銀座きもの青木 ONLINESHOP では、8月31日より、2020 お茶席フェアを開催いたします。

江戸小紋や色無地を中心に、きちんと感のある織名古屋帯や袋帯など、揃えておくと安心なひと揃えをご覧いただきます。

オンラインショップ先行でご案内いたしますが、9月2週目あたりより、銀座店でも実際にお手に取ってご覧頂けます。店舗にてご用意が整いましたら、改めてご案内させて頂きます。

銀座店にてスタッフ一同、皆様のお越しを心よりお待ち申し上げております。

銀座店スタッフ 松浦