
銀座店
桜の季節がやってきます!
河津桜(撮影 2月中旬)
このところ日が長くなり、ずいぶん暖かくなりました。いよいよ春本番ですね。・・・となると、心待ちにされるのが桜の開花です。品種によってはもう咲き始めているところもありますが、あの花曇りの幻想的な情景を思い浮かべると心が沸き立ちます。
いつも思うのですが、私たちは何故こんなにも桜に惹かれるのでしょう?分析するのも野暮ですが、これはもう日本人のDNAに組み込まれているといってもいいのではないでしょうか。
知識人や文化人の見解を借りて言うならば、それは日本人の精神性にあるのだと思います。この花の特性でもあり、パッと咲いてパッと散る。その儚さ、潔さ。武士道にも通じる無常観。やはり日本人の心に根付いているものなのですね。
一方では農耕生活との深い関わりがあります。古来、私たちは桜を農業開始の指標としてきました。桜というのは毎日の平均気温を加算していった積算温度が400℃前後になると花を咲かせるといいます。そんな科学的根拠のない時代、農民たちは樹の状態を注視しながら種を蒔くタイミングを見計らっていたのでしょう。水田の脇に桜を植え、開花とともに種を蒔き、豊作を祈って宴会をする。これが花見の原型となったのでしょうね。
そして、すなわちそれは食物を授けてくださる自然への感謝です。さくらの語源は、田の神様を意味する「さ」と神の御座を意味する磐座(いわくら)の「くら」が結びついたとされる説、また『古事記』に出てくる木之花佐久夜毘売(コノハナサクヤヒメ)の「さくや」から転じたという説もあります。
生産活動の指針と神への感謝。やはり日本人と桜は切っても切れない関係にあるのですね。
文化面では、よく古典の授業で聞くこの話が象徴的です。
上代では「花」といえば梅を指していました。唐の文化が隆盛だった頃、中国の詩文で多く扱われていた梅を歌うことが教養人のステータスだったという訳です。天皇から農民まで、あらゆる階層の人々の歌を集めた『万葉集』の例を挙げると、およそ4500首のうち梅を詠んだ歌が118首、桜の歌が44首で、ダントツに梅が優勢。目下の元号、令和の引用も梅の歌を詠んだ宴会の序文からでした。
「初春の令月にして気淑く風和らぎ、梅は鏡前の粉を披き、蘭は珮後の香を薫らす」
ところが遣唐使廃止後、国風文化の円熟と共に日本人の桜への愛情が突出して行きます。在原業平の「世の中に絶えて桜のなかりせば春の心はのどけからまし」はまさに象徴的な一首。のち『古今和歌集』『小倉百人一首』『源氏物語』など、桜を愛でるおなじみの著作が続々登場して行く訳です。
実際の桜という樹木について調べてみると、これまた興味深い事が判ります。 日本古来の原種はエドヒガンザクラ、オオシマザクラ、ヤマザクラ、カンヒザクラなど10種類とされ。その原種が交配し、野生化したものが100種、それをさらに人の手で交配して作られた栽培品種や園芸品種がなんと300種もあるのだそうです。どうりで、沢山あるわけです!
最もポピュラーなのはやはりソメイヨシノですよね。
ソメイヨシノは江戸末期、染井村(東京都豊島区)に住む植木職人が作った交配種で、ヨシノザクラと区別するために 名付けられたとの事。オオシマザクラとエドヒガンザクラの交配種と推定されています。10年ほどで大きく成長するため、 明治時代に全国の学校や公園、河川沿いなどに植えられ、主流となって行ったそうです。
というわけで、お楽しみはやっぱり桜の着物!
ルールに関してはいろいろありますが、ご自分の直感とアイディアで工夫されて、この時期ならではの着こなしをお楽しみくださいませ。
当店では、来週水曜日(2月24日)から「さくら」柄の着物や帯などがたくさん店頭に並ぶ予定をしています!オンラインショップでも同日15時より、新着商品としてご紹介いたしますので、どうぞご期待くださいませ。
銀座店スタッフ 松浦