あおきDIARY

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銀座店

和のピンク 春色を探して

立春過ぎて雪が降ったりと、まだまだ寒さが続くこの頃ですが 皆さまいかがお過ごしでしょうか。 寒いとはいえ日の光に輝きが増し、梅も嬉しそうにほころんでいます。 桜の枝にも芽の膨らみが見られ、もうひと月半もすれば、 またあの花曇りの光景に会えるのですね。 そう思うと、自然と胸が高鳴ります。

そんな時期、思わず手に取るのが柔らかなピンク色の着物や帯。 梅、桃、桜など次々に咲く花や、移りゆく季節の事象を表す優雅な名前を持った 和色のピンクは本当にたおやかです

銀座店にも素敵なお品が多々ありますので、色の名前の由来とともに 少しご紹介致しましょう。

まずはさすがの存在感を放つ、浦野理一さんの経節紬の名古屋帯。

写真左(帯4115)右(帯3762

左は一斤染(いっこんぞめ)という、平安時代に命名された歴史あるお色です。

当時は紫草で染める紫色と、大量の紅花で染める紅色は大変高価なもので、 天皇の許可がなければ着用できない禁色でした。 そこで一般人に許されたのは一疋(二反)の絹布を染めるのに、わずか一斤(約600グラム)の紅花を 使うというこの色でした。このことから、一斤染は聴色(ゆるしいろ)とも呼ばれるそうです。

右は同じく聴色である退紅(あらぞめ、たいこう)というお色で、こちらも少量の紅花で染められたもの。

紅花染はかなり濃く染めないと褪色しやすく、次第に色褪せていった様子が 名前となったのではないかという説もあります。

訪問着 甚三紅色(B-3037

紅花染にまつわるこの色もまた興味深いです。 紅花は江戸時代になっても高価で度々幕府から禁制にされていたため、 桔梗屋甚三郎という人物が蘇芳を使って染め出したのがこの甚三紅(じんざもみ)です。

安価に染められるので、庶民の間で大人気となったそうです。心が沸き立つ色ですね。

続いては柔らかなニュアンス色の帯たち。

写真左から:(K-7348K-7850L-6041K-8048

左端、梅の図の縮緬地名古屋帯は薄柿(うすがき)というお色。 基本の柿色(かきいろ)は渋柿と弁柄で染めた、どちらかといえば朱色に近い紅色ですが、 それが何度も水にくぐって色調が薄くなったのが洗柿(あらいがき)であり、洗柿よりさらに薄く、 灰みを含んだのを水柿(みずがき)と呼ぶそうです。

左から3番目、桜の菱文の袋帯は淡い水柿色です。

また左から2番目の塩瀬の名古屋帯は灰梅(はいうめ)、一番右の織名古屋帯は宍色(ししいろ)。

宍色の「宍」は「肉」と同義語で、もともとは日本人の肌の色のようなごく薄い橙色を指したそうです。

いずれも興味深いですね。

着物では下の着物のお色、虹色(にじいろ)に注目です。

訪問着 虹色(着物3223

虹の色といえばまず、空に渡る七つの色を思い出しますが、日本の伝統色のくくりでは ほんのり淡い紅色のこと。

虹という言葉はもともと中国から渡ってきた文字に日本語の読みを当てたもので、 本来は龍のことを指すのだとか。そして欧米では虹をrainbow(雨の矢)と表現します。

日本では、この淡い紅色は光の反射によって青や淡い紫を帯びて色が変化して見えるという事から、 虹色と呼ぶ事になったのではないかと言われています。

四季が豊かで複雑な自然現象が現れる日本ならではの、繊細な感性が導き出した素敵な名前ですね。

一年12ヶ月をさらに分け、二十四節気・七十二候と季節にこだわる日本人。 豊かな自然と優れた色彩感覚が生み出す和の色はとても魅力的です。

今週より桜フェアもスタートしています。

季節を運ぶお好みの色を探しに、この春もぜひ青木にお立ち寄りくださいませ。
皆様のお越しを心よりお待ち申し上げております。

銀座店スタッフ 松浦

今週のお店のお花 東海桜が満開です!

※色の見え方はお使いのパソコン等、デバイスの環境によって異なりますのでその旨ご了承くださいませ
※ブログ内でご紹介させていただきました商品は一点ものが多いため、すでに販売済の場合もございますのでその旨ご了承くださいませ。