銀座店
夏ならではの自然布を
私が住むここ三浦半島では初夏から燦々と太陽の光が海に降り注ぐのですが、ここ最近停滞している厚い雲に阻まれて富士山が一向に姿を見せてくれないのが淋しいです。
きらきらと輝く夏の陽光が待ち遠しいですね。
この暑くて眩い太陽の光をも力強く受け止めてくれるのが自然布の力ですね。日本には古来から多くの自然(原始)布があり私達の生活を支えてくれました。
きもの青木 で最も多く扱いのある夏物が麻の商品です。
麻は主に三種類に分類されますが、まず最もよく目にするものは、お洋服に使われるヨーロッパ産アマ科の亜麻。こちらは機械紡績糸です。
二つめは麻酔成分が含まれることで知られるクワ科の大麻。その性質ゆえに神聖なものとされ、丈夫でぐんぐん育つその様から、大麻の葉を模した麻の葉模様は子供の産衣などにしばしば染められました。
そして三つめは上布と呼ばれるイラクサ科の苧麻。苧麻は他の自然布と違って灰汁煮(あくだき)をする工程がいらなかったので絹や木綿が日本に渡来する以前から生産が増え、卑弥呼の時代には栽培までされていたという記述が残っているそうで驚きです。
灰汁煮がないといっても繊細な苧麻を守り育て、苧刈り、水漬けして皮を剥ぎ、洗って透き通るような青苧にしてその後、績む作業にはいるという工程は大変なことです。
一本の繊維は髪の毛より細く、その先を三つに割いて撚り繋げていくので結び目はほとんど目立ちません。一日に績める量はおよそ7g、一反分を績むには3ヶ月以上かかるそうです。本当に気が遠くなるような作業ですね。
手間暇をかけて織りあげられた布は、越後の雪晒し、八重山ならば海晒しなど、その土地にあった仕上げがなされてからようやく私達の元へとやってきます。
作り手の方々の自然への祈りと感謝の想いがあるからこそ、この夏の強い陽射しを優しく受けとめ、着る人を守ってくれるのですね。
このような着物や帯に触れることで力を貰える気がいたします。
現在、きもの青木には芭蕉布をはじめ、しな布、藤布、八重山上布、宮古上布、越後上布など、希少な自然布の着物や帯をセレクションにてご案内しております。
その美しさと力強さをどうぞご覧にいらしてくださいませ。
また道明さんの帯留めや岡小百合さんの帯留めなどを、銀座店舗限定フェアとして 7月31日までご案内しております。湯島にある小さな門構えのお店、道明。職人さんが心を込めて組み上げる逸品や、作家作品ならではの個性ある素敵な小物たちに出会えます。どうぞ楽しみに遊びにいらしてくださいませ。
銀座店スタッフ 江上