あおきDIARY

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銀座店

麻素材で夏も着物を快適に

パリオリンピックが無事幕を下ろし、8月も終盤にさし掛かってまいりましたが 皆さまいかがお過ごしでしょうか。
運動音痴の私ですが、オリンピックでの選手たちの活躍には胸が熱くなる想いでした。つい夜更かして見入ってしまい、睡眠不足になられた方も多かったのではないでしょうか?

立秋を過ぎ暦のうえでは秋を迎えたとはいえ、厳しい暑さはまだまだ続きそうですね。

夏のお楽しみかき氷。お気に入りはほうじ茶味です♪

今年の夏は全国的に観測史上に残るような猛暑が続き、クーラーを効かせた部屋で着付けをしても、駅に着く頃には一仕事終えた後のようにぐったりしてしまいます。

暑がりで汗かきな私は、いかに着物で夏を快適に過ごせるかアレコレ試してみたのですが、ダントツで心地よさを実感できたのが夏の大定番「麻」でした。

麻の襦袢は持っていたのですが、今年は肌着にも麻をとり入れてみたところ、なんともさらっと心地良いこと!今更ながら麻のすばらしさを体感できましたので、今回は麻について少し掘り下げてみたいと思います。

近年の着物に用いられる麻はほとんどがラミー(紡績の苧麻糸)です。手績みの苧麻糸によるものは糸づくりだけでも大変な手間暇を要するため、現在では国の重要無形文化財に指定されたごく一部のお品のみとなっていますね。なお、基本的に糸に撚りをかけ独特のシボを出した織物は縮(ちぢみ)、シボのないものは上布と呼ばれています。

麻の繊維はストローのような中空構造となっており、体の熱を外に発散し同時に汗を吸い取る働きをするまさに天然のエアコン!高温多湿な日本の夏には最も適した繊維といえそうです。さらに、汚れが落ちやすい、洗濯に強い、乾くのが早いなどたくさんのメリットがあり丈夫さと清潔さを兼ね備えた万能選手。一枚は持っておきたいですね。

=小千谷縮=

毎年人気の高い小千谷縮。小千谷縮が作られる越後の国、新潟ではかなり昔から越後麻布という上質な麻布が織られていました。この麻をアレンジして生まれたのが小千谷縮。強い撚りをかけた緯糸を用いて製織し、ぬるま湯で手揉みして糊を落とすことで、撚りの戻りによる涼やかなシボをつくります。

小千谷縮は製品によって用いる糸や機など制作工程が大きく異なりますが、国の重要無形文化財に指定される最高峰のものは

➀糸は手績みの苧麻糸であること
➁絣は手くびりであること
➂いざり機(地機)で織ること
➃縮の仕上げは湯もみであること
➄雪ざらし

と、➀~➄の要件を満たす必要があります。

重要無形文化財指定の小千谷縮の着尺の製作は年間数反ほど。希少価値の高い夏の織物の中でもとりわけ入手の難しい逸品ですね。

こちらも過去にセレクション商品として何点かご紹介しておりますが、きもの青木ではラミー(紡績糸)を用いて高機で織り上げられた伝統的工芸品指定のものや、気軽にお召しいただける機械機によるお品を中心にご紹介しております。

*小千谷縮のコーディネート
シックな色合いの小千谷縮に型染めの麻帯を合わせて

着物:A-4010帯:K-9927

=近江ちぢみ=

近江ちぢみは滋賀県の湖東地域で生産される麻織物です。湖と豊かな山々に囲まれたこの地域には高い湿度と美しい水があり、この高温多湿で内陸性の気候が麻織物の生産には最適とのこと。長い伝統に基づく技術によって織り上げられた強撚糸の織物を、『しぼ取り板』と呼ばれる板の上で生地をほぐしながら撚りを戻し皺をつけていました。現在ではこの作業も機械化が進んでいるようですが、このようにして得られたしぼによるシャリ感が肌との接地面を減らし、べたつきを取り除き快適な着心地を運んでくれます。

*近江ちぢみのコーディネート
爽やかなペールブルーの近江ちぢみに麻の染め帯で季節感を楽しんで

着物:A-3989、帯:K-9922

=近江上布=

近江上布の特徴は細い麻の繊維で織られる爽やかな風合いと絣模様です。機械化を取り入れた近江ちぢみとは異なり、伝統的工芸品に指定される近江上布は、素材はもちろん絣の染色や機にも様々な条件が定められており、上記の手もみによるシボ出しも要件の一つとなっています。

*近江上布のコーディネート
ナチュラルカラーの近江上布に人気の栗山工房の帯を合わせて

着物:P1-633(店頭限定商品)、帯:K-9757-2

=越後上布=

言わずと知れた夏の逸品、越後上布。 手績みのごく細い糸で織られる越後上布は、透けるように薄さと軽くさらりとした風合いが特徴です。

苧麻の皮から糸を績み、糸を染め、昔ながらの地機で手織りし、できあがった反物を仕上げに雪の上に広げて『雪晒し』を行います。気の遠くなるような時間をかけた工程を経る越後上布は、国の重要無形文化財に指定されています。

銀座店では文化財指定の越後上布の帯も多数ご紹介しています。

左から、帯5178帯5145帯4755帯5164

ひとくちに麻といっても地域や製作工程の違いでそれぞれ違った特性があるのですね。

麻の肌着の過ごしやすさに感動し、着物以外でも麻のルームウェアやワンピースを買ってみたりとすっかり麻に魅了された夏でした。

銀座店では暑さ対策としておすすめしたいお品が他にもございます。夏はもちろん単衣の時期でも重宝する綿麻の高島ちぢみの肌着。

こちらは綿80%、麻20%で、さらっとしながらも柔らかい肌触りが心地よいです。

また、小さな立役者としてヘチマの帯枕と前板も書き添えておきますね。

へちま帯板(G-1350)、へちま帯枕(G-2992

まだまだ厳しい残暑が続きそうですが、透け感の少ないものであれば9月に入っても麻の着物を楽しむことができますね。

皆さまも熱中症に気をつけて、残りの夏を満喫してください♪

銀座店では、一足早く秋に向けて袷のお品も入荷してまいりました。
コーディネートのお悩みなどお気軽にご相談くださいませ。スタッフ一同ご来店をお待ちしております。

銀座店 勝田

『きもの青木銀座店』

TEL03-3564-7171
営業時間 11:00~18:00
定休日:月・火曜日

店内混み合う状況もございますので、ご来店予約を頂くと比較的スムーズにご案内できます。ぜひ、ご来店予約フォームをご利用くださいませ。

※ご予約なしでもご相談を承っておりますが、ご予約のお客様を優先して対応させていただきますので長時間お待たせしてしまう場合もございます。コーディネートのご相談やお着物や帯をご持参いただく場合は、ご予約をおすすめしております。

皆様のご来店を、スタッフ一同心よりお待ちしております。

※ブログ内でご紹介させていただきました商品は一点ものが多いため、すでに販売済の場合もございますのでその旨ご了承くださいませ。