宗伝唐茶辺りのお色が近いでしょうか、仄かな赤みを帯びた穏やかな茶褐色の地に、所々橘をアクセントに置いた枝垂れ桜、裾には流れに遊ぶ丹頂鶴が描かれた訪問着です。友禅のみの表現ながら、どっしりとした縮緬地に金銀彩が効果的に用いられた華麗な景色が、実に重厚な存在感を見せていますね。こちらは、父・浦野理一さんの工房を受け継ぎ、技術や素材はもとより繊細な色彩感覚などあらゆる面からその本質を守り続けた、浦野範雄さんの作品です。日本画から抜け出たような京友禅の美しさは、生活を感じさせない形でこそ最大限の輝きを見せますが、浦野さんの友禅はそれとは対照的に、着る人の日々の背景が着こなしに反映されるように思います。映画や雑誌でみるように女優さんが堂々とお召しになる姿はもちろん素晴らしいものですが、普通の女性が背筋を伸ばしてきちんと装う姿こそが、浦野さんの着物の品格ある美しさの象徴とも思います。良い意味での緊張感無くしては袖を通せない、力のある着物ですが、必ずや着る人の支えとなってくれる頼もしい一枚。この機会にぜひお手に取ってご覧下さいませ。

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