国の重要無形文化財に指定される貴重な織物の中でも、夏の布である宮古上布、芭蕉布、そして今回ご紹介する越後上布は特別。出会う度にその清浄な美しさに圧倒されます。深い雪に閉ざされる冬の越後で、乾燥に弱い手績みの苧麻糸を雪の湿度に助けられながら地機で織り上げ、早春の雪晒しによって仕上げられる布…夏でもひんやりとした肌触り、風をまとうかのようなふわりとした心地良い張り、本物の越後上布がもたらす極上の着心地は、部外者からは計り知れない厳しい仕事が生み出す贅沢なのですね。今回のご紹介は青鈍色が近いでしょうか、灰みを含んだ穏やかな緑系の地に幾何絣、松竹梅や花蝶の絵絣が散らされた、非常に手の込んだお品。長く様々な上布に触れてまいりましたが、これほど糸質の良いものにはなかなか出会えません。凝った絣柄共に、今後はご紹介が難しい高いレベルのお品です。日本の夏の宝もの、ぜひお手に取ってご覧下さいませ。