源氏鼠色が近いでしょうか、仄かに紫みを含んだ優しいグレイの地に、ほっそりとした蔓葉で繋いだ桜の花や巻き貝などの愛らしいモチーフを置いた、本紅型の小紋です。こちらは知念紅型研究所による製作、城間家と並んで琉球紅型の三宗家として知られる知念家を継がれた知念貞男さんの工房の作品。(2012年に貞男さんが逝去されて以降は、奥様である知念初子さんと九代目である冬馬さんによって製作が続けられています。) 紫や藍を中心に置いた明暗濃淡のお色が穏やかに調和する優しい景色のお品は、本紅型の朗らかな色の個性を残しつつも、どなたにもすっと馴染んで頂ける親しみやすさを備えていますね。型彫り、糊置き、色挿しから糊伏せ、地染め等々作業の全てが工房内での手仕事で行われる本紅型の着物は、ご紹介できる機会も大変少ないもの。ぜひこの機会にご覧頂けましたらと思います。