黄八丈の織り元として、昔ながらの方法を踏襲し続けてきた山下家は、先々代めゆさんの時代から別格の高い評価を受けてきましたが、先代八百子さんの代で更に大きな飛躍を遂げられました。黄八丈の色は苅安、椎、マダミの三色。その伝統を守りつつも色糸を重ね、織技を工夫することで穏やかな中間色をも表現する八百子さんの黄八丈は、驚くほどモダンで洗練されており、その一連の作品によって、美しくもやや個性の強いこの織物の認識を変えた方も多いことと思います。こちらは八百子さんから山下めゆ工房を受け継がれた芙美子さんの作品で、黒橡色を主調として、輝くような苅安の黄金色を挿し色に置いた精緻な市松幾何文様。遠目からは細縞のようにも見えますが、極小さな市松による構成です。それぞれの色が溶け合うことで彩りの主張が抑えられ、深い光沢と奥行きのある穏やかな景色が生まれています。時代と共に進化し続ける黄八丈、その気品豊かな織り味をどうぞお楽しみ下さいませ。