国の重要無形文化財技術保持者・緒方早雪さんの久留米絣です。こちらは深々とした濃藍色を背景に、するすると伸びる蔓花が表現された優しい表情のお品。経緯絣と緯絣を細やかに使い別けることで、景色に奥行きを持たせており、明るい中藍の葉、柔らかな白による蔓、そしてくっきり清々しい白の花が、力強い美しさをみせていますね。経緯の絣糸がかちりと合った花はもちろんのこと、一部には経緯絣も取り入れながら、ほっそりとした蔓の様子を緯絣でなめらかに表現する技術も素晴らしく、絣括りから本藍による染め、滑りの悪い木綿相手の織りに至る大変な手間のかかる工程で、一つ一つ積み重ねられた確かな仕事が見事に結晶しています。気温差の大きい合いの季節には、上質な木綿の着物はとても重宝なもの。しっかりとした張りは風を通し、それでいて温かく身体を護ってくれます。また少々の雨は気にならない気軽さも、木綿ならではの恩恵ですね。水を通す度に白が澄み、藍が冴えると言われる久留米絣の逸品、ぜひこの機会にお手に取ってご覧くださいませ。