絹鼠色が近いでしょうか、仄かに灰みがかったオフホワイトの紬地に波のような風のような白鼠色のライン、重ねて紅掛空色から薄花色のコスモスの花、青丹色や鶸色のコスモスの花が繊細な型絵染めで表現された単衣の着物です。こちらは日本工芸会正会員として活躍なさる型絵染作家・岩井香楠子さんの作品。小倉遊亀さんに師事、後に藝大で学んだ日本画の素養、人間国宝鎌倉芳太郞さんから習得した紅型の技法、超一流の師の手で育てられた岩井さんの天稟は、日本画とも紅型とも異なる「型絵染」というかたちで見事な花を咲かせています。透明感のある彩りを載せたコスモスの花々は、型による染めでありながら躍動的で瑞々しく、花野に立っているかのように着る人を楽しませ、輝かせてくれることと思います。力強くもたおやかな岩井さんの世界、どうぞこの機会にご覧下さいませ。