沖縄県指定無形文化財「本場首里の織物」保持者として、また国画会会員として活躍なさるルバース・ミヤヒラ吟子さんの作品です。この方は母である人間国宝・宮平初子さんから受け継いだ多彩な首里織の技術に、フランスの織物の研究で培ったエレガントな感性を重ね合わせた、高雅な着物や帯の制作で良く知られていますね。琉球王府の貴族や士族の衣服として洗練を極めた首里織はその技法も幅広く、花倉織・首里花織・道屯織・手縞・綾の中・総絣など様々ですが、今回のご紹介は首里花織による着物。使われている色は虫襖色や青白橡色、藍鼠色に僅かに効かせた憲法黒茶色辺りが近いでしょうか。僅かに青みを含んだグレイ系や緑系の濃淡の繊細な彩りを駆使して、端正な花織による幾何文様が立体的に表現されています。清々しい淡彩と、お母様の初子さん譲りの高度な技量によって完璧に整えられた浮織りが作る心洗われるような景色は、観る者の居住まいをも正してしまう程に凜々しく気品に満ちたもの。時代を超えて息づく琉球王朝の美意識を、どうぞお楽しみ下さいませ。