数ある沖縄の染織品の中でもその可憐な美しさが印象的な読谷山花織。かつては琉球王朝の御用布として織り継がれながらも明治半ばには衰退し、殆ど技術も途絶えかけていたこの織物を、戦後大変な苦労の末に復元なさった人間国宝 故 与那嶺貞さんの作品です。こちらは黒や藍、焦茶などが溶け合ったような深い深い色を背景に細い縞を配し、間には綜絖を用いたごく精緻な緯浮花織によって、美しい彩りを小さく煌めく星のように浮かび上がらせた着物。基本とされる風車花と銭花の二つのかたちを組み合わせた伝統的なモチーフが整然と並べられています。裏側には膨大な量の緯糸が渡っているはずですが、僅かな緩みや乱れもない端正な景色からはその存在は全く感じられませんね。困難な復元作業に取り組み、その命を今に繋いだ与那嶺さんならではの卓越した技量が光る稀少なお品、気品香る布の清らかな美しさを、ぜひお手に取ってご覧くださいませ。