万葉集にもその名が遺る藤布は古代より日本人と共に在りましたが、中世以降その工程の厳しさや麻・木綿の出現によって産地が激減、現在では大変稀少な布となっています。かろうじて丹後半島上世屋地区に伝えられていた技術が保存会の方々の尽力によって守られ、現在も極少量ながら制作が続けられています。こちらは藤の繊維そのものの色と椿染めでやや色を深めた2色の茶鼠系の色をシンプルな市松に置いた八寸名古屋帯。色の底から仄かに香る紫の色みにふと、この木の花のあでやかさが偲ばれます。さっくりとして素朴な布味はしな布など他の自然布にも共通するものですが、やや抑えた張り、微かにしっとりとした優しい手触りは藤布ならではのものですね。野趣の中にもどこか女性的な柔らかみを含んだ美しい布、どうぞこの機会にお手に取ってご覧くださいませ。

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