江戸時代から続く「染司よしおか」の先代である吉岡常雄さんの作、珊瑚色が近いでしょうか、明るいピンクの塩瀬地に枝葉と共にお皿に載せた葡萄の図が描かれた名古屋帯です。吉岡さんは上代染織や天然染料など染織に関する幅広い業績を残された方ですが、やはりその筆頭は貝紫による染めの解明。遙か 3500年もの昔から、古代フェニキア人の手で染められていたとされる技法の研究です。小さな巻き貝から得る染料はごく少量であり、美しさに加えその稀少性からも非常に高価なものとなり、貝紫染めによる紫は別名帝王紫と呼ばれました。こちらはその貝紫の染料を用いて描かれた贅沢な染め帯で、歴代の権力者を魅了したあでやかな紫と金の色が乳白色のお皿を背景にくっきりと浮かび上がっています。吉岡さんの長年に亘る大きなお仕事を、カジュアルな染め帯の形でお楽しみ頂ける名品、上質な紬や小紋などの装いにいかがでしょうか。