染色作家・故 木原明さんの作品です。木原さんは小倉建亮さんに師事、のちに辻が花染から学んだ絞り、そして友禅の双方を併用した独自の作風を確立し、日本工芸会正会員として活躍なさいました。こちらは優しい象牙色の絽地に、緩やかに続く道と共に桔梗の花が配された夏の訪問着です。絞りならではの柔らかな滲みと、細い糸目に縁取られた精緻な友禅、対照的な二つの表現が溶け合い、自然に生まれる遠近や色の強弱が、木原さんらしい透明感のある世界を形作っていますね。小径の先へと心導かれるような風景に作り手の静かな内面が映る、清澄な趣きの大作、盛夏のお出かけにいかがでしょうか。