今日は着物で。vol.5 心華やぐ装いで、年末年始をより楽しく

ふだんの着物に慣れてきたら、年末年始にはいつもより少しだけ華やかなきもの、選んでみませんか。
11月も半ば、令和元年も段々と残り少なくなってまいりました。12月に入れば素敵なイベントがたくさん待っていることと思います。新しい年が明けて落ち着くまでの年末年始は、慌ただしさの中にも楽しい時間が散りばめられていて、大人になった今もやっぱりふわふわと心浮き立ちますね。この季節だけの輝きに包まれた街を背景に、私たちも心華やぐ装いで素敵なときを過ごしたいもの…
「今日はきもので。vol.5」今回は年末年始の華やかな装いのポイントをまとめてみました。

年末年始は一年のうちでも着物が映える場面がとりわけ多く、この機会に着物を着てみたいな、と思う方もたくさんいらっしゃることと思います。年末にはクリスマスパーティや忘年会、年越しの集まり等々、年始には初詣や年始のご挨拶、初釜など着用のチャンスには事欠きません。女性は忙しくもあるときですが、忙中閑あり。着物をまとうことで時間の流れも緩やかになってくれるような感も…この年末年始は初心者の方もぜひ、着物で過ごしてみませんか。

1.種類別の格とTPOから考える「華」

華やかな装い、と言っても実に様々です。色の印象が華やかなもの、柄の格の高さが華やぎを呼び込むもの、金彩や繍いが贅沢な華を見せるもの…また裾模様、絵羽、小紋、無地など柄付けの場所や量によっても変わってきますね。
先ずは着物の格とTPOについて簡単におさえておきましょう。

色留袖
色留袖の華やかさは「仕立てと紋」で調節

留袖は第一礼装として最も格の高い着物です。色留袖で染め抜きの五ッ紋付は叙勲や親族の結婚式に出席する方の装いとなりますので、今回のような場面では少々重すぎますね。同じ裾模様でも比翼が付いていないお品、一ッ紋や繍い紋など細かな部分でやや格を抑えた軽めのお品でしたら、訪問着と同様にお楽しみいただけます。重めの袋帯を合わせてホテルなど大きな洋の空間でのパーティ、また社中の雰囲気によっては初釜にいかがでしょうか。

訪問着や付下げ
訪問着や付下げの華やかさは
「柄の格と分量」で選ぶ

「華やかな装い」のイメージに最も近い着物が訪問着かもしれませんね。
反物を一旦着物のかたちに仮縫いした状態で、全体に柄がつながる絵羽模様で装飾されたものが訪問着。また反物のかたちのままで大まかに柄がつながるように装飾されたものが付下げです。共に社交着としての扱いですが、柄の置き方や量によっても印象が大きく異なり、正装としての格を備えた訪問着からちょっとしたお食事にも気軽にお召し頂ける付下げまで、幅広いお品が創られていますね。重厚感のある色柄でしたら重めの袋帯を合わせて、ホテルなど広い空間でのパーティや初釜などに。モダンで少し軽やかさのある色柄でしたら洒落感のある袋帯を合わせて、レストランのクリスマスディナーや新年のパーティなどに。軽めの付下げでしたら袋帯や織名古屋帯を合わせてより幅広い場面でお楽しみいただけます。
*厳密には仕立て上がった状態で訪問着か付下げかを別けることはできませんので、きもの青木 では基本的に胸から衿にかけても続いた柄を置いたものを訪問着としています。

色無地や江戸小紋
色無地や江戸小紋の華やかさは
「色」が決め手

先回の特集「礼を尽くした装いでー色無地・江戸小紋」でご紹介したように、色無地や江戸小紋は紋の有無や合わせる帯次第で、華やかなお席、改まったお出かけ、気軽な街着まで幅広い場面に対応できます。年末年始にお召しいただくならば、明るいお色目でストレートに華やぎを表現するも良し、重厚感のあるお色目に新年の厳かな心持ちを託すも良し。お出かけ先に合わせて、帯や小物合わせなど様々なかたちでご自身の個性や拘りをお楽しみいただけますね。 *特集「礼を尽くした装いでー色無地・江戸小紋」もご参考下さいませ。

小紋
小紋の華やかさは「柄と密度」に注目

小紋と一括りにしましても、やはり技法や柄置き、またモチーフの扱いによっても実に様々…絞りや繍い・型染めや手描き、連続模様や飛び柄、古典意匠からモダンな抽象文やシンプルな縞格子 etc. 枚挙にいとまがありませんね。もちろんモチーフにもよりますが、基本的には地空きの部分が大きい無地感覚のお品ほど格が高く、贅沢な絞りは洒落みが強い、縞格子はカジュアル度が高い、という印象でしょうか。例えば画像のような彩り美しい古典意匠の飛び柄小紋は、染め帯を合わせていただけば街着として気軽にお楽しみいただけますし、袋帯を合わせればちょっとしたパーティなどにも充分対応できる格調と華を備えています。上品な華やか小紋はおすすめのアイテム、合わせる帯次第で年末年始のお出かけを殆どカバーしてくれそうですね。

紬や織物
織りの着物の華やかさは
「素材と織りの光沢感」で決まる

紬や御召・染織作家作品など先染めの着物も、糸質や風合い・色柄などによって豊富なバリエーションがありますね。本結城に代表される真綿系の紬はほっこり素朴、大島や牛首など生糸系の紬は滑らかで光沢のある地風がややドレッシーな趣きです。西陣御召や錦織の着物は改まり感のあるものも多く、技法や文様次第では礼装用となるような気品豊かなお品も見られます。また手間暇を惜しまぬ仕事から生まれた作家作品は、輝くような存在感こそが華。織りの着物がお好きな方でしたら、紬や織物に「華やかさ」を探す、そんな選択も楽しいですね。

2.お正月にはなにか新しいものを、ひとつ

着衣始 (きそはじめ) は元々、お正月に新しい着物に袖を通すことを指しますが、着物や帯だけでなく、帯締めや帯揚げなどの小物、肌襦袢や足袋、半衿等々…帯枕や腰紐等の着付け小物でも良し、お正月には何か一つでも新しいお品を用意しておきたいですね。新しい年の始まりを厳かに待つ心持ちが整います。師走に入れば年末まではあっという間、早めに心がけておくと安心ですね。

3.まずは帯替えからはじめてみる

年末年始はただでさえ出費が嵩むもの・・・。イベントに合わせて着物を選ぶほどの余裕があれば良いのですが、きもの初心者の方にはなかなか勇気がいりますね。そんな方には帯替えから始めてみることをお勧めいたします。 第1章の基本を踏まえた上で、TPOに合わせたそれぞれの「華」を考えながらコーディネートを楽しんでみてはいかがでしょうか。
ここで柄選びのNGポイントをおさえておきましょう。
十二支の帯は年内から年明けまでお使いいただけますが、梅、福寿草、南天、水仙、玩具柄 などの帯は新春・お正月向きです。雪だるまなども冬柄ですが、年が明けてから松の内の間はもう少しお正月感のある華やかなものにシフトした方が良いと思います。

帯替えシミュレーション
季節ごとの帯をクリックしてみてください。

イベントごとに帯を替えるだけで印象が随分と変わりますね。
お手持ちの着物でも、帯や小物合わせを替えて幅広い装いをお楽しみくださいませ。

  • 普段の帯
  • クリスマスには
    洋風唐草文
  • 年明けには
    おめでた尽くし
  • 普段の帯
  • 雪輪文様で
    はんなりクリスマス
  • 年明けには
    貝合わせ文
  • 普段の帯
  • クリスマスには
    聖夜のイメージで
  • 年明けには
    宝尽くし
  • 普段の帯
  • クリスマスには
    モダンな袋帯
  • 年明けには
    松竹梅
  • 普段の帯
  • クリスマスには
    洋の色を取り込んで
  • 年明けには
    雪持ち南天
  • 普段の帯
  • クリスマスには
    寒色系の染め帯も
  • 年明けには
    正月遊びのモチーフで

年末年始のお出かけには、心華やぐ装いを。
着物ならではの特別な充足感を、ひとりでも多くの方に楽しんでいただけたらと願っております。お茶の席や目上の方への年始のご挨拶ですと、お相手に失礼のないようにとの配慮が必要ですが、それ以外の場面であればこの季節のお出かけはひとりひとりが主役です。ご自身が素敵な時間を過ごすための「華やかな装い」、心を満たしてくれるそれぞれの装いを自由にお選びになってみてはいかがでしょうか。

※2019年11月発行
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