花々と共に鹿や象、バクなどの愛らしい動物たちの姿が大らかに表現された着物です。バティックとはインドネシア伝統の臈纈染めで、チャンティンと呼ばれる道具を用いて細かい文様の蝋置きが施されます。こちらはその技術を着物に用いたもので、更に贅沢なことに本藍による染めが併用されたお品。藍色の濃淡に穏やかな茶が溶け合い、個性的でありながらも微笑ましい、とてものどかな世界が生まれています。動物たちの表情を眺めているだけでわくわくしてしまう、どこかで出会えたら思わず声を掛けてしまいたくなる、そんな心弾むお品です。ぜひこの機会にご覧くださいませ。

京友禅の名門として広く知られた染の北川さんの小紋です。こちらは色を薄めた柳茶色が近いでしょうか、灰みを帯びた黄緑系の地にほんのりと蛍暈かし風の場を取り、ごく細い金彩を効かせた抽象的なモチーフを置いたお品。染め下地には浮織りによる幾何文が浮かぶ節立った御召つむぎが使われた、カジュアルにお召し頂ける一枚です。無地感覚で合わせる帯を選ばず、落ち着いたグリーン系の淡彩が春らしい爽やかな趣きを運んでくれることと思います。お出かけやお稽古などに気軽にお楽しみ下さいませ。

砥粉色が近いでしょうか、やや灰みを帯びた明るいビスケット色の地に裾濃暈かしを置き、愛らしい桜の花枝がはらりと散らされた本加賀友禅の訪問着です。水の流れや風に任せているような優しい動きのある構成が、儚く清楚な花の魅力を引き立てるお品、落ち着いた中間色を基調として所々に綺麗なピンクを効かせた上品な景色は、着る人や年齢を選びませんね。季節ならではの風情ある装いをどなたも気負いなくお楽しみ頂けることと思います。こちらは加賀染振興協会の厳しい落款登録制度の認可を得た本加賀友禅作家・田中勲さんの作。花鳥風月を題材とした写実的な表現は加賀友禅の特徴ですが、その本道を礎に置きながらも程良く弾ませたアレンジがとても軽やかな印象です。訪問着としての品格を備えながらも、一歩控えた好感度の高い装いをお楽しみ頂ける加賀友禅の名品、お呼ばれやパーティなどのお席にいかがでしょうか。