
銀座【着物3279】菊池洋守作 おやり紬 (証紙、畳紙付)
銀座【着物3279】菊池洋守作 おやり紬 (証紙、畳紙付)
灰青色系のグレイ、その微妙な濃淡色が不規則な横段暈かしをつくり、重ねて細い竪縞が織り込まれた無地感覚の着物です。こちらは一昨年に逝去の報が届いた菊池洋守さんの作品。柳悦博さんに師事、のちには白洲正子さんにもその才を認められたこの方が、八丈島の工房で丹念な手仕事を重ねて一反一反織り上げた布は八丈織と名付けられていました。中でもこちらは一年に一反のみの生産とされる稀少な「おやり紬」。真綿を一度解した後に糸を手で引き出す「ズリだし」という古い手法を用いてのいとづくりから始まる、大変手のかかったお品です。菊池さんの作品として目にする、見事な光沢を備えた緻密な綾織りとは全く質感が異なりますが、糸に負担が掛からない分、損なわれない絹本来の艶めきが滲むように輝き、深みのある景色を生みだしています。秋の日に溶け込む静かな色、優しくも弾力のあるふくよかな糸味が、紬があるべき本来の姿をそっと教えてくれるように思います。