これから着物をはじめる方へ
着物を着てみたいと思うきっかけはさまざまですが、
- お母さまの着物など手元にある品々を生かしたい
- 茶道などのお稽古事を始めて、着物が必要になった
- お友達や雑誌などで刺激を受けて
- 海外留学やオリンピックなどを機に、日本文化を見直した
などの場合が多いのではないでしょうか。
着物の世界は決まりや約束事がたくさんありすぎて不安、きちんとわかっていないと心配で、とおっしゃる方が多いのですが、実際のところ、その知識が必要な場合と、殆ど気になさらなくて良い場合があるのでは、と思います。自分にとってマストである最低限の約束事さえ把握していれば、さほど神経質にならずに、着物を楽しんで頂けますね。
1 . 着物や帯の種類を確認しましょう
- (1)
- 留袖
- 帯から下の裾部分にのみ柄が置かれた着物で、紋を付けて第一礼装として着用します。フォーマル
- (2)
- 訪問着
- 柄ゆきが縫い目を超えて綺麗に繋がる絵羽模様の華やかな着物です。フォーマル
- (3)
- 振袖
- 袖丈の長い華やかな着物で、未婚の女性の第一礼装として着用できます。フォーマル
- (4)
- 付下げ
- 前側と背側の柄の上下の向きが揃うように染められた着物です。訪問着のような柄付けのものから小紋に近いものまで様々なタイプがございます。フォーマル
- (5)
- 小紋
- 江戸小紋や更紗小紋など全体に模様が均等に染められた着物です。街着~セミフォーマル
- (6)
- 御召
- 撚りの掛かった先染めの糸で織り上げられた、しゃり感のある着物です。街着~セミフォーマル
- (7)
- 紬
- 真綿糸や玉糸などを用い、糸の状態で染めてから織り上げられる温かみのある織物です。街着
- (8)
- 羽織
- 着物の上に重ねるジャケットのような位置付けの羽織物です。
- (9)
- 和装コート
- 防寒や塵除けのための羽織物で、形によって道行コートや道中着がございます。
- (10)
- 丸帯
- 幅広に織り上げられた表裏が同じ生地の袋型の帯です。フォーマル
- (11)
- 袋帯
- 袋状の形で幅が30cm前後、長さが420〜450cm程の帯です。二重太鼓で使用します。セミフォーマル~フォーマル
- (12)
- 名古屋帯
- 手先や胴部分を半分に折った形で、幅が30cm前後、長さが350~380cm程の帯です。
一重太鼓で使用します。街着~セミフォーマル - (13)
- 八寸名古屋帯
- 両脇をかがっただけで芯の入らない形のカジュアルな名古屋帯です。街着(本綴を除く)
- (14)
- 半幅帯
- 全長を通じて15cm前後の幅で仕立てられた帯です。街着
- 袷
- 10月から5月までが袷の季節。裏地付きの着物です。
- 単衣
- 6月と9月が単衣の季節。裏地のない着物です。
- 薄物
- 7月と8月が薄物の季節。透け感のある生地の着物です。
2 . 各部の名称を知りましょう
3 . ご自分のサイズを知りましょう
①身長、②腰回り(一番太い場所)、③裄、この3箇所の採寸で大まかなサイズを出すことができます。
着物の寸法は
- A 身丈 (背中の縫い目の部分で、衿の下から裾までの長さ)
- B 裄 (首の後の頸椎から手首までの長さ)
- C 袖丈 (袖の長さ・基本的には49cm程)
- D 身幅 (前幅と後幅)
で表示しています。
きもの青木のサイトには、採寸結果から選ぶことができる身長別サイズガイドを掲載していますので、
こちらからもご自身に合ったサイズがおわかり頂けることと思います。
4 . 着付けに必要なものは揃っていますか?
- ①
- 長襦袢
- 着物の衿汚れを防ぐ「半衿」を付けて着物のすぐ下に着ます。
- ②
- 肌襦袢
- 長襦袢の汚れを防ぐ肌着として、長襦袢の下に着用します。
- ③
- 裾よけ
- 裾捌きを良くし、長襦袢の汚れを防ぐため、長襦袢の下に着用します。
- ④
- 足袋
- 木綿、麻、ストレッチなど様々な素材がございます。
- ⑤
- 帯枕
- お太鼓の形をつくるための円みを帯びた枕状の着付け小物です。
- ⑥
- 帯板
- 帯前を平らに整えるための着付け小物です。
- ⑦
- 腰紐
- 着付けの要となる紐です。着物用と長襦袢用として3本が必要です。
- ⑧
- 伊達締め
- 腰紐の上に締めて着崩れを防ぎます。長襦袢用と着物用の2本が必要です。
- ⑨
- クリップ
- 後で衿を留めたり、帯を仮留めする時に使います。
- ⑩
- 帯揚げ
- 帯枕を包み安定させる、長方形の布状の小物です。
- ⑪
- 帯締め
- 帯を整え安定させる、紐状の小物です。
- ⑫
- 半衿
- 長襦袢の衿に縫い付けて、着物の衿汚れを防ぎます。
- ⑬
- 衿芯
- 長襦袢の衿と半衿の間に通し、襟元を真っ直ぐに整える着付け小物です。
- ⑭
- 小衿芯
- 肌襦袢の衿に通して衣紋を綺麗に抜くための芯となる着付け小物です。
(きもの青木着付け教室では使用しておりますが、お好みに合わせてお使いください)
最初は本や動画を参考に、ご自身で着付けにトライしてみて、お好みを見つけていってくださいね。
1 . お手持ちの着物の寸法と
ご自身のサイズを測りましょう
着物の寸法は、第1章-2でもご案内したとおり、
- A 身丈 (背中の縫い目の部分で、衿の下から裾までの長さ)
- B 裄 (衿下背中心の縫い目から袖口までの長さ)
- C 袖丈 (肩から袖下までの長さ・基本的には49cm程)
- D 身幅 (前幅と後幅)
で表示しています。
着用する方のサイズを知るためには下記の寸法を測ります。
- A 身丈 →基本的に身長と同じ(±5cm程度は許容範囲とお考え頂けます。)
- B 裄 →首の後の頸椎から手首関節(手くるぶし)辺りまでの長さ
- D 身幅 →腰回り(一番太い場所)
この3箇所の採寸で大まかなサイズを出すことができます。
きもの青木のサイトには、採寸結果から選ぶことができる寸法表を掲載していますので、コチラからご自身に合ったサイズがおわかり頂けることと思います。
◎現代の方は少し以前と比べますと、ぐんと手足が長くなり、また身長も高くなってきていますので、特に裄が足りない場合が多いかと思います。袖付け部分に縫い込みがある場合には、お直しによって裄丈を伸ばすことも可能です。
2 . 着物や帯の状態を調べてみましょう
長く仕舞われていた着物や帯は、汚れや傷みが出てしまっている場合がございます。 明るい場所で大きく広げて点検してみましょう。特に衿、胸元、上前(左の前幅や袵)、後身頃など目立つ場所には気をつけて。
◎シミや汚れは、お手入れで落とせる場合があります。
※古い着物のお直しやお手入れには費用がかかります。手をかけるべきか否かも、ここでしっかりと見極めましょう。
3 . 小物はできれば新しいものを
お母様やお祖母様の時代の着物や帯は、状態やサイズに問題が無い場合は今もそのまま着用できますが、やはり帯揚げや帯締めなどは現代のものを新しく揃えた方が、着こなしに新鮮みと清潔感が出るように思います。
きもの青木ではオリジナルの帯揚げも人気商品です。袷用の縮緬帯揚げや、単衣や夏向きの絽縮緬帯揚げを上品な装いに欠かせない繊細なお色目に別染めで誂え、お求めになり易いお値段でご紹介しております。また帯締めも江戸組紐の上質なお品を各色取り揃えております。
お草履も古いお品は鼻緒が硬くなってしまっているものが多く、できましたらご自身のものを新調なさると安心ですね。足元の快不快はその後のきもの生活を左右するほど影響大です。青木では最初の一足として、雨の日も安心なカレンブロッソや一日履いていても疲れないウェーブ草履などをおすすめしています。
1 . 改まったお席に重宝な、
色無地や江戸小紋を揃えましょう
ご自分のサイズがわかりましたら、まず幅広い場面に対応できる色無地や江戸小紋を一枚揃えたいですね。
どのようなお品をご希望ですか?
- きもの青木では、プレタサイズの新品から、お稽古に気軽に使えるお手頃価格のリユース品まで、豊富なお品揃えの中からご予算に合わせてお選び頂けます。また、納得のゆくお品をとお考えの方には、人間国宝作品のご紹介もいたしております。
どうぞご参考になさって下さいませ。 - →コチラ
2 . 先生や社中のお考えは 大切な「きまり」です
お稽古事の装いは、先生や社中の方のご意向や雰囲気にも左右されることが多いですね。例えば茶道の場合、初釜などには華やかめの訪問着や色留袖を、ということもあれば、小紋や無地紬などでも「お着物であれば」充分です、とおっしゃる先生もいらっしゃいます。判断に迷った時には、先ず社中の方にご相談なさると安心です。
4 . ときには合繊の着物も力強い助っ人です
水屋仕事や荒天時のお稽古など、汚れが心配な日のために合繊の着物も選択肢に入れておきたいですね。家庭でお洗濯できるということは大きな安心となって、自信のある所作にも繋がります。
青木では、東レシルック素材のものから品質の高さや優れた縫製で定評ある「きもの英」のリユース商品なども随時入荷いたしております。
基本的に「好きな着物を好きなときに着たい」自由に楽しみたい方ですね。このような方は「早く着物を着たい」一心で、独学でもあっという間に着付けをマスターなさることも。「着たいもの」がはっきりしている場合が多いので、この場でお話しするまでもありませんが、最低限おさえておきたいことは、洋服と同じく常識的な「TPO」、そして「 失礼があってはならないお相手の有・無」の2点ではないかと思います
不思議なもので、自分で実際に着物を着てお出かけを重ねるうちに、体感的に場に相応しいもの、そうでないものがわかってきます。少々の失敗も大事な経験です。基本的なことを少しずつ身につけて行く中で、取捨選択しながら必要と思われる知識を、ご自身で集めてみてください。
随分と長いお話になってしまいましたが、 最後までお読み頂きまして、ありがとうございました。
特殊な環境でない限り、今の生活では七五三や成人式など節目の行事以外、着物には親しむ機会は殆どありませんね。この頁にはいろいろな理由で新たに「着物」の魅力に気づいた方が訪れて下さっていることと思います。お母様やお祖母様の着物でどうしても身につけてみたいもの、一目惚れしてしまったもの…たった一枚の着物や帯が導いてくれたという方も少なくありません。
洋服のお洒落も楽しいものですが、かたちは全て同じでありながら素材、色、柄の組み合わせが無限に広がる着物のお洒落は、識るほどにわくわくするような広く豊かな世界です。また外から眺めているほど堅苦しいものでもありません。着てみたいという気持ち、そう思わせてくれる一枚があれば、いつでも気軽に扉を押してみて下さい。着付けだって昔の人は見よう見まね、最初から完璧な着姿なんて逆に不自然なものです。小さな失敗を笑い話に場数を踏んでいけば、どこが着付けの勘所なのかも何となく自分でわかってきます。好き、という気持ちさえあれば、きものと仲良くなることは思いの外簡単です。どうぞ、大らかな気持ちで着物を楽しんでください。
お手伝いしたくてうずうずしている人間が、たくさん青木で待っています。