印象としては檳榔子染色が近いでしょうか、灰みや茶みが溶け込むこっくりとした地色に極幅広の金銀平箔糸を用いて、琳派の画を思わせる巨象の姿を大胆に表現した袋帯です。経糸には金糸と絹糸を手よりで丁寧に絡み合わせた撚糸を、緯糸には機場で織手が平箔を一筋一筋手切りで糸状に裁断した和紙の箔糸やシルクリボンなど扱いの難しい特殊な糸を用い、篦(へら)引きと櫛織りを併用した熟練の技術で丹念に手織られた贅沢な洒落帯。西陣の老舗・株式会社都さんのお品のなかでも「箔づくし」と銘されたこだわりの逸品です。素材の個性が際立つ存在感あふれる一点、力のある着物に合わせて、洗練された装いをお楽しみ下さいませ。
軽い透け感としゃりっとした手触りが夏らしい練色の細かな市松織地に、青海波と共に帆掛船や網干を配した名古屋帯です。波間には色とりどりの魚たちの姿も見え隠れしており、沖縄らしい豊かな海の景色に心和みますね。こちらは安里紅型工房で本紅型を学び、現在はご自身の工房で制作を続ける山内邦恵さんの作。紅型らしい個性はそのままに、より軽快でモダンな表現が新鮮なお品、単衣時期から夏を通して紬や上布・小紋などの装いを朗らかに引き立ててくれることと思います。
京で創業以来280年余の歴史を持ち、当代の鋭敏な感性を卓越した染織技術がかたちとした個性的な帯で名高い老舗・誉田屋源兵衛さんの袋帯です。こちらは象牙色の地に金銀糸、青白橡や鳩羽色、灰青や白茶などの穏やかな淡彩を挿し色に置いて、多種多様な割付文を市松の形に配したお品。亀甲や紗綾形、花菱に分銅繋ぎ、網代に麻の葉などが精緻な織りで整然と並べられています。贅沢な全通ですのでその数二百六十とのこと、一つ一つを眺めているだけで楽しくなってしまいますね。細やかな吉祥文を集めた意匠ですので合わせる着物も幅広く、改まったお席やお祝いのお席にも安心してお使い頂けます。ぜひこの機会にお手に取ってご覧くださいませ。
贅沢で個性的な帯づくりで知られる龍村美術織物さんのお品から、亜麻色が近いでしょうか、淡いベージュ系の地にコプト裂を思わせる聖鳥の姿が細やかに表現された織りの名古屋帯です。同じくコプト裂に由来する「花環をもつインコ」をモチーフとした贅沢な綴れ帯は龍村さんの代表的な作品の一つとして良く知られていますが、シンプルでカジュアルな表現ながら、エキゾティックで力強い意思を感じさせる鳥の表情に、どこか通ずるものを感じますね。合わせる着物の色柄を選ばず、紬や小紋などの装いをきりりと引き締めてくれる個性ある一点、名古屋帯のかたちですが締めて頂くと二重太鼓に見える仕立てですので、きちんとしたお席にも安心です。ぜひお手に取ってご覧くださいませ。
衣料に適した柔らかな繊維を採るために、原料の糸芭蕉を3年もの間丹精込めて育てることから始まる芭蕉布作り。繊維を取りだし細く裂き、糸を績み…昔ながらの方法で時間や手間を惜しまずつくられる布は、伝統的なその技術が国の重要無形文化財に指定されています。こちらはナチュラルなベージュの地に縞を置いた名古屋帯。琉球藍の深い青と車輪梅の明るい焦茶色を組み合わせた、細縞・杢・無地の三種類の縞が美しいグラデーションを見せていますね。素材の野趣と落ち着いた彩りがしっくりと調和するシンプルで贅沢なお品、上布や夏織物などに合わせて、凛として清々しい芭蕉布の魅力をお楽しみ下さいませ。
隙間を空けてさっくりと織られた淡いグレイの変わり織りの夏紬地に、青褐色の濃淡で芝や蔦葉に団栗などを吹き寄せ風に配した染めの名古屋帯です。柔らかく滲んだように表現されたモチーフは遠目からは絞りのようにも見えて、ほのぼのとした優しい景色に心和みますね。透け感はありますが、張りのある地風で芯の入った仕立てですので、盛夏から秋単衣までお使い頂けそうです。夏の織りや上布、小紋などに合わせて、季節ならではの風情ある装いをお楽しみ下さいませ。