お茶ときもの、あれこれvol.1 ― 必要な一枚を選ぶために
湯の沸く音
一座建立の佇まい
整然とした空間で
丁寧に点てられた
一服のお茶に心を和ませる
そんなひと時を求めてお茶のお稽古に励まれる、またこれから始められる方も多いのではないでしょうか。
茶の湯は日本文化を結集した総合芸術とも言われます。陶芸、書跡、建築、染織、料理など、私たちが古来から高めてきたあらゆる道に通じます。そして、培われるおもてなしの精神性。一服のお茶を挟んで点てる側、戴く側が同じ空間を共有し、互いに相手を思う「和」の心が生まれてゆくのです。
その精神性こそが茶の湯の心と言えましょう。

着物はそんな茶の湯の心を演出してくれる重要なアイテム。
繰り返される「型」から生まれる澱みない動き、その美しい所作も着姿から始まります。
いつもより気持ちも新たに、お稽古へ、お茶会へ、ぜひ着物で出かけませんか。
当コラム「お茶ときもの、あれこれ」では、お茶と着物にまつわるあれこれを毎回テーマにしてお届けしていきたいと思います。
初回はまずお茶を始めてみたい、または始めたばかりという方に、ご覧いただきたい、押さえておくべきポイントをまとめてみました。
必要な一枚を選ぶために、ぜひお役立てくださいませ。
お茶席の着物、どう選ぶ?
押さえておきたいポイント&留意点
お茶の装いの基本
お茶の所作は、着物を着て動くことを前提としたもの。 そのため身体に沿いやすい、動きが滑らかな染の着物、いわゆる柔らかものが好まれます。
対するかたもの、いわゆる紬は張りがあるため動きが固く見えたり、 膝行(しっこう、にじり)においても擦れ音が気になったりしますので、所作に慣れてから 場合に応じて着用するのが良いでしょう。
お稽古なら紬でも可という場合は、反物を織ってから染める後染めのものが風合いが柔らかで動きやすいと思います。
そして何より清潔感が大切。白足袋、白半衿を着用し、帯留や指輪など、お道具を 傷つける恐れのある装飾品は外しましょう。
また一般の着物の決まりと同じく、季節は先取りが基本。 衣替えはなるべく暦に準じて行い、時候に応じた色や柄、 模様や紋様を早めに取り入れましょう。
お茶席の「格」に合わせた装い
装いはお茶席の格に合わせます。 結婚式でも新郎新婦の両親や仲人が第一礼装を身に付けるように、礼節が重んじられるお茶席では格の高い装いが必要となります。
一方、気軽な集まりでは比較的カジュアルな装いでOK。
何よりお茶はもてなす側、もてなされる側が互いに心を通わせ、和む場。 そのため場の雰囲気を察し、全体の調和を考えた装いが求められます。そこでどんなお茶席にどんな装いが適切なのか考えてみましょう。
シーン別に考えましょう
茶事
茶事は正式なお茶会のこと。
湯を沸かす炭を熾す(おこす)ことから始まり、食事(懐石)、濃茶、薄茶と進む、 いわゆるお茶のフルコースです。そのためお客さまの席入りから終了まで4〜5時間かかることも。
正午の茶事、暁の茶事、夜咄(よばなし)の茶事など催しはいろいろありますが、 いずれも少人数で行われ、まさにお茶を楽しむ茶会の真骨頂です。
こうした茶事の装いは会の趣向や季節、時間にもよりますので、その場に相応しい取り合わせを考えたいものです。
初釜、お祝いのお茶会
初釜は新年のお祝いのお茶会。
新しい年に初めて釜に火をかけることから初釜と呼ばれます。 こちらも茶事と同じく、食事を伴うフルコースのお茶会となります。
年が明け、新たな気持ちで臨む最初のお茶会ですので、晴れやかな装いで参りましょう。
品格のある色留袖、柄付けがたっぷりとした訪問着や付け下げ、またお嬢さまなら振袖を着用されるのも華やかでよいでしょう。
帯は質感のある織りの袋帯を。古典柄や有職文はもちろん、お正月らしいおめでたい柄、またその年の干支にちなんだ柄なども楽しそうです。
このほか初風炉、口切りなど、季節に応じたお祝いのお茶会も その時節に応じた正装を心掛けて。
テーマ茶会
お茶を楽しむには事欠かない日本の文化。 風光明媚で細やかな四季の移ろいのある自然環境、そして人々の培ってきた生活の知恵や楽しみ。 そうした様々な趣向を取り込んだのがテーマ茶会です。
例えば春の花見、夏の蛍狩、秋の月見、冬の雪見。
行事でいえば雛祭や端午の節句、七夕や盂蘭盆会(うらぼんえ)。 西洋から入ってきたハロウィーンやクリスマスなども取り込んで、独自のお茶会にしてしまうという、なんとも心踊る催しです。こうしたお茶会では装いの準備も楽しみですね。
春ならば梅や桜のモチーフ、夏は花火や秋草、秋は実り豊かな果実や紅葉。冬ならは雪輪や星、ツリーやサンタ柄なども。
お茶席なのできちんと感を忘れず、着物と帯の格の釣り合いも考慮して臨みたいものですね。
大寄せのお茶会
大寄せのお茶会は茶事を簡略化したもの。
不特定多数の人々が参加できるので「大寄せ」の名があり、お寺や日本庭園のような広い場所で行われます。
お菓子と薄茶だけのお席と、点心という軽い食事にお菓子と薄茶、または濃茶の付いたお席などがあります。
多くの人が集まる気軽なお茶会ですので、装いは比較的カジュアルなものを。 落ち着いた色合いに、古典紋様などが散らされた飛び柄小紋、また江戸小紋などがよいでしょう。
帯は織りの名古屋帯や袋帯、また染めの名古屋帯や洒落袋を合わせて。
お茶は習っていないけれど、お誘いを受けて何を着ようか悩んだら、こうした装いがおすすめです。
仲間うちで集まる気軽なお茶会もカジュアルな装いで楽しみましょう。
お稽古
お稽古ならば普段の着物として着慣れているお手持ちの着物、また柔らかものの小紋や江戸小紋がおすすめです。
所作を身に付けるため立ち座りが頻繁なので、動きに沿う、滑りの良いものがよいでしょう。また水濡れが気になったり、水屋のお仕事の多い日などはポリや合繊の着物も便利です。
帯は織りの名古屋帯や袋帯、また季節感のある染帯を合わせると素敵です。
最初の一枚を選ぶなら
いろいろ例を挙げてみましたが、ではいざお茶会へとなった場合、 様子や勝手が判らないと何を着て良いか悩みますよね。
そんな時、一枚あると便利なのが色無地と江戸小紋です。
(詳しくは過去コラム「礼を尽くした装いで」をご覧ください)
色無地は生地に光沢のある綸子や緞子なら地紋が浮き立って華やかな印象になります。対して光を抑えた縮緬地や紋意匠なら華美を避け、控えめな印象になります。 色はお顔映りやご年齢を考慮してお選びになると良いでしょう。
江戸小紋は三役(鮫、行儀、角通し)や五役(三役に加えて大小霰、万筋)の定め柄がフォーマル度も高く便利です。一方で季節感や風物詩を文様にしたいわれ柄をシーンに応じて装うのもお洒落ですね。
このような着物の便利さは帯合わせで変化を楽しめることです。
お茶席では座って所作することが多いので、帯は案外目立つもの。 その帯を際立たせるのも地紋や柄が邪魔をしない色無地、江戸小紋の素晴らしいところです。
お茶の世界では有職文や名物裂などが大切にされますので、こうした柄付けのスタンダードな帯を合わせれば安心ですね。
また別途社交着として着用する場合は、お好みの帯を合わせてご自身の個性を際立たせてくださいませ。
また、色無地、江戸小紋ともに家紋を入れるとさらに格高になりますので、一つ紋を入れておくと 便利でしょう。
リユースのお着物の場合には、ご自身の家紋とは異なる紋が入っている場合が殆どかと存じます。
繍い紋の場合には付け直すことも可能ですが、母方父方、婚家等様々な紋の着物がございますので、 お茶の場面ではさほど気になさらなくてもよろしいかと思います。
※尚、リユースのお着物に時折みられる 「つぼつぼ」紋は紋許が必要ですので、こちらはお避けくださいませ。
流派や先生のお考えによっても装いの幅は異なってまいります。 基本的なところを押さえた上で、先生や社中の方にご相談なさることも大切ですね。
きもの青木 でもしばしばお問い合わせをいただく、お茶のきもの、あれこれ。
これからはコーディネートなどを取り入れながら様々な角度からご紹介してまいりたいと思います。
銀座きもの青木・オンラインショップや銀座店舗では、お茶席に安心してお使いいただける着物や帯、帯締め、帯揚げのほか、数寄屋袋、バッグ、草履などの小物もご用意してございます。
オンラインショップでは、お茶席におすすめの品々をこちらのページ《お茶席のきもの》で一堂に集めてご紹介しております。
ご自身のお茶ライフを満喫できますよう、ぜひきもの青木 をご利用くださいませ。

※2023年3月発行
※当サイト内の文章、画像等の内容の無断転載、及び複製等の行為は固くお断りいたします。
気持ちを届ける、青木セレクトの小物いろいろ

この春、きもの青木では新たにギフト包装サービスを始めます!
和装小物など「贈り物にしたいのだけど…」と以前から多くのご要望が寄せられていたので、少しづつ、少しづつ準備を整えておりました。
あくまで帯締めや帯揚げ、といった小物類のお品物に限りますが、新しい生活を始める新社会人の方や、感謝の気持ちを伝えたいお母さま、頑張っている大切な方へ…。
気持ちを届けるツールのひとつとして、あおきセレクトの和装小物を贈ってみませんか。
あおきセレクトの上質な小物
あおきセレクトの和装小物は使い心地のよい良質な品ばかりを厳選しております。小さな面積ながらも着姿をぐんと引き立たせてくれる帯締めや帯揚げ、着物を着る方でしたら少しでもバリエーションを豊富に揃えたいものです。
あおきの和装小物は比較的お手頃な価格帯でご用意しておりますので、贈り物としても、ご自分へのご褒美にもおすすめです。
*京都衿秀さんの帯締め・帯揚げ

定番の冠組
きものまわりの小物の老舗として定評ある京都衿秀さんのお品から、シンプルで使い易い無地の冠組を定番として取り揃えています。青木が選んだお色目は 色、どれをお選び頂いても失敗のない上品な彩りばかりです。絡まったり縮れたりの心配がない撚り房ですので、保管時も安心ですね。

二色暈しの畝打組
これまで何点かご紹介してまいりました二色暈かしの畝打組も、使い易い綺麗系の彩りを選んでオリジナルで組んで頂きました。金糸は入っておりませんが、程良いボリューム感のある平打ちの紐は、改まった感のある袋帯に載せて頂いても充分な存在感を見せてくれます。こちらも扱いの楽な撚り房の仕上げです。

フォーマル用帯揚げ
フォーマルな装いには、やはり淡い彩りや金彩を取り入れたお品が相応しいですね。縮緬ではややカジュアルと思われる場面のために、ぜひご用意下さいませ。

飛び絞りの帯揚げ
帯まわりに小さく色を添えてくれる飛び絞りの帯揚げは、装いに優しさを添えるはんなり上品な甘さが持ち味。今回のご紹介は青木が色出しをお願いしたオリジナルですので、例えば赤のいろも明るめと暗めの二色からお選びいただけます。装いの色や場面に合わせて、飛び絞りならではの女性らしい表情をお楽しみ下さいませ。
*定番ちりめん無地帯揚げ
きもの青木の定番商品、人気の縮緬帯揚げシリーズです。繊細な淡彩からこっくりと深みのある濃色まで、コーディネートを引き立てるオリジナルカラーをセレクトしています。また綺麗な淡色と中間色を組み合わせた二色暈かしは、それぞれを単色としてもお使い頂けますし、二色を少しずつ覗かせても素敵ですね。ふっくらとした上質な縮緬を使用していますので、胸元が綺麗にまとまります。そしてこれからの春夏の季節には、絽縮緬の無地シリーズも大活躍ですね。どれも長い間お客様からご好評いただいております人気の帯揚げです。
*定番の美しい彩り
あおきの帯揚げは現在22色で展開いたしておりますが、初夏のこの季節にお選びいただくならこちらがおすすめです。着物姿は帯揚げや帯締めの色選びでがらりと雰囲気が変わりますね。花のいろ、水のいろ、空のいろ... この時期らしい明るく透明感のある彩りを添えることで、いつもの装いにもふわりと季節感が生まれます。ぜひお試しになってみてくださいね。
これからの時季、つい惹かれてしまうのが淡彩の着物や帯。淡い彩りで全身を包むときには、ほんの少し小物に色を効かせると綺麗にまとまりますね。そんなときにはこのような挿し色がおすすめです。
小物コーディネート
*季節をテーマにコーディネート

はんなり優しい春のイメージで…
朗らかで穏やかな表情の染帯などを好む方には飛び絞りの帯揚げをいかがでしょうか。帯締めは無地の冠組ですっきりと。

参考商品番号
帯揚げ:R-606 ~ 610、帯締め:S-760 ~ 769

大人の夏はクールなイメージで…
モノトーンの着物や帯を好む方には寒色系の小物を挿し色に。シンプルで爽やかな小物遣いが夏素材の涼感を引き立ててくれますね。

参考商品番号
帯揚げ:G-1256 ~ 1260、帯締め:S-302 ~ S-322

品格を纏う秋のイメージで…
お祝いの会や観劇など、何かと催事が多くなる季節にはフォーマルな小物が重宝なもの。暈しの彩りが美しい小物合わせはいかがでしょうか。

参考商品番号
帯揚げ:G-1544 ~ 1595、帯締め:G-1564 ~ 1567、G-1576

ほっこり温かな冬のイメージで…
紬好きの方へは、程よい存在感と使いやすさでお墨付きの縮緬無地の帯揚げに、しなやかな締め心地の畝打組のセットが好相性です。

参考商品番号
帯揚げ:R-08 ~ 93、帯締め:G-1622 ~ 1626
あおきのギフト包装
*お箱は3種類の大きさをご用意しております
帯揚げや帯締めなどのプレゼントやちょっとしたお礼にお使いになりたい方、ぜひご利用くださいませ。



- ギフト包装可能な商品には、カートの上部に【贈答用のラッピング承ります】と明記してございます。こちらの明記のない商品の包装は対応いたしかねますのでご了承くださいませ。
- お箱代は有料となります。
- オンラインショップにてご注文の際、選ばれた商品とは別に【GIFT-A~C】という商品をカートに入れてご注文くださいませ。
詳しくはコチラのページをご覧くださいませ。

遠方にお住まいで直接お会いできない方にも、気持ちを届けるのに相応しい上質な和装小物、大切な方の喜びのお声を想像しながら選んでみてくださいね
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きれい色の単衣きもの

さわやかな風や明るい日差しに誘われて、花々や草木の蕾がほころび始めました。
着物を着てお出かけしたいな…という気持ちも日々募るばかりですね。
きもの青木 オンラインショップでは、単衣時期や夏に向けての着物や帯のご紹介がスタートいたしました。特にご注目いただきたいのは単衣のお着物。近年では、五月頃を過ぎると汗ばむほどの陽気の日も珍しくないことから、活躍の機会も徐々に増えてきているように思います。

とはいえ、袷に比べて、単衣はつい手持ちのラインナップが寂しくなりがちに…
この春、きもの青木では、幅広いニーズにお応えできる単衣のきもの各種をお手頃価格でご用意させていただきました。
季節に合わせた着物をまず一枚揃えておきたい、という初心者の方から、お稽古ごとなどで着用機会が多く枚数を揃えたい、という方にもおすすめしたいラインナップです。ぜひご覧くださいませ。
単衣の江戸小紋

着回しの良さではいちばんの優等生ともいえる江戸小紋。
鮫、行儀などの改まったお席に対応できる柄ゆきのものから、普段着にもお楽しみいただけそうな少し洒落味のある色柄ゆきのものまで、様々な雰囲気のものをご用意しています。
単衣の江戸小紋はコチラ
着用シーンで迷った際は、こちらの記事も参考にしてくださいね。
特集「今日は着物で。 vol.1 江戸小紋を着る日」
単衣の色無地

とろりとした光沢のある生地感がエレガントな色無地です。お色目は淡いベージュや落ち着いた薄いピンク色、清々しいブルーなどいずれもごく上品な雰囲気の淡彩がお顔色も明るく、晴れやかな表情を引き立ててくれます。地紋は格高の吉祥文様である桐竹鳳凰文が入っていますので、改まった場面やお祝いのお席にも安心してお使い頂ける品物です。
帯合わせで気軽にTPOを調整でき、カジュアルなお出かけならば季節の染め帯などを、きちんと感が必要な場面にはフォーマルな帯も合わせられるのは無地感覚の着物の強みですね。
単衣の色無地はコチラ
参考記事:特集「礼を尽くした装いで -色無地・江戸小紋-」
単衣の小紋ー蛍暈かし

ふんわりと浮かび上がる暈かしが上品な華やぎを添え、女性らしい優しげな風情の漂う装いを演出してくれます。紋を付けて略礼装とする場合もある上記の2種類に比べるとややカジュアル性は増しますが、合わせる帯次第では少しフォーマル性の必要な場面にもお使いになれますので、無地っぽい着物ばかりではちょっと淋しいな...という方にもおすすめです。
単衣の小紋・蛍暈かしはコチラ
帯合わせで季節感をまとって
単衣は袷に比べてどうしても着用期間が短くなりますから、手持ちの一枚を上手に着回すコツも知っておくことも大事ですね。着用時期の6月と9月、どちらも移り変わる季節の合間であるからこそ、その時期ならではの趣を大事にした帯や小物選びを心がけたいものです。


例えば画像(左)のように、明るい色目を組み合わせたコーディネートならばこれから夏に向かう季節らしい爽やかな印象になりますし、画像(右)のように帯をダークな色目や季節を先取りした柄ゆきに変えてみると徐々に秋の訪れを予感させる時期にぴったりの落ち着いた印象になります。 少しの工夫で印象が随分と変わるのが着物の楽しいところでもあり、着る方それぞれのセンスの見せどころでもありますね。
実際、これからの時期にはお出かけに際して何を着たらよいものか…と迷われる方も多いのではないでしょうか。改まった場面やお茶席などでは従来の暦どおりの装いがベターですが、気軽なお出かけでしたらご自身が快適に過ごせるかどうかも重要視して、臨機応変に装いを選んでいきたいですね。
皆さまくれぐれも体調にはご注意の上、素敵なお着物ライフをお楽しみくださいませ。
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今日は着物で。vol.5 心華やぐ装いで、年末年始をより楽しく

ふだんの着物に慣れてきたら、年末年始にはいつもより少しだけ華やかなきもの、選んでみませんか。
11月も半ば、令和元年も段々と残り少なくなってまいりました。12月に入れば素敵なイベントがたくさん待っていることと思います。新しい年が明けて落ち着くまでの年末年始は、慌ただしさの中にも楽しい時間が散りばめられていて、大人になった今もやっぱりふわふわと心浮き立ちますね。この季節だけの輝きに包まれた街を背景に、私たちも心華やぐ装いで素敵なときを過ごしたいもの…
「今日はきもので。vol.5」今回は年末年始の華やかな装いのポイントをまとめてみました。

年末年始は一年のうちでも着物が映える場面がとりわけ多く、この機会に着物を着てみたいな、と思う方もたくさんいらっしゃることと思います。年末にはクリスマスパーティや忘年会、年越しの集まり等々、年始には初詣や年始のご挨拶、初釜など着用のチャンスには事欠きません。女性は忙しくもあるときですが、忙中閑あり。着物をまとうことで時間の流れも緩やかになってくれるような感も…この年末年始は初心者の方もぜひ、着物で過ごしてみませんか。
1.種類別の格とTPOから考える「華」
華やかな装い、と言っても実に様々です。色の印象が華やかなもの、柄の格の高さが華やぎを呼び込むもの、金彩や繍いが贅沢な華を見せるもの…また裾模様、絵羽、小紋、無地など柄付けの場所や量によっても変わってきますね。
先ずは着物の格とTPOについて簡単におさえておきましょう。
色留袖
色留袖の華やかさは「仕立てと紋」で調節
留袖は第一礼装として最も格の高い着物です。色留袖で染め抜きの五ッ紋付は叙勲や親族の結婚式に出席する方の装いとなりますので、今回のような場面では少々重すぎますね。同じ裾模様でも比翼が付いていないお品、一ッ紋や繍い紋など細かな部分でやや格を抑えた軽めのお品でしたら、訪問着と同様にお楽しみいただけます。重めの袋帯を合わせてホテルなど大きな洋の空間でのパーティ、また社中の雰囲気によっては初釜にいかがでしょうか。

訪問着や付下げ
訪問着や付下げの華やかさは
「柄の格と分量」で選ぶ
「華やかな装い」のイメージに最も近い着物が訪問着かもしれませんね。
反物を一旦着物のかたちに仮縫いした状態で、全体に柄がつながる絵羽模様で装飾されたものが訪問着。また反物のかたちのままで大まかに柄がつながるように装飾されたものが付下げです。共に社交着としての扱いですが、柄の置き方や量によっても印象が大きく異なり、正装としての格を備えた訪問着からちょっとしたお食事にも気軽にお召し頂ける付下げまで、幅広いお品が創られていますね。重厚感のある色柄でしたら重めの袋帯を合わせて、ホテルなど広い空間でのパーティや初釜などに。モダンで少し軽やかさのある色柄でしたら洒落感のある袋帯を合わせて、レストランのクリスマスディナーや新年のパーティなどに。軽めの付下げでしたら袋帯や織名古屋帯を合わせてより幅広い場面でお楽しみいただけます。
*厳密には仕立て上がった状態で訪問着か付下げかを別けることはできませんので、きもの青木 では基本的に胸から衿にかけても続いた柄を置いたものを訪問着としています。

色無地や江戸小紋
色無地や江戸小紋の華やかさは
「色」が決め手
先回の特集「礼を尽くした装いでー色無地・江戸小紋」でご紹介したように、色無地や江戸小紋は紋の有無や合わせる帯次第で、華やかなお席、改まったお出かけ、気軽な街着まで幅広い場面に対応できます。年末年始にお召しいただくならば、明るいお色目でストレートに華やぎを表現するも良し、重厚感のあるお色目に新年の厳かな心持ちを託すも良し。お出かけ先に合わせて、帯や小物合わせなど様々なかたちでご自身の個性や拘りをお楽しみいただけますね。 *特集「礼を尽くした装いでー色無地・江戸小紋」もご参考下さいませ。

小紋
小紋の華やかさは「柄と密度」に注目
小紋と一括りにしましても、やはり技法や柄置き、またモチーフの扱いによっても実に様々…絞りや繍い・型染めや手描き、連続模様や飛び柄、古典意匠からモダンな抽象文やシンプルな縞格子 etc. 枚挙にいとまがありませんね。もちろんモチーフにもよりますが、基本的には地空きの部分が大きい無地感覚のお品ほど格が高く、贅沢な絞りは洒落みが強い、縞格子はカジュアル度が高い、という印象でしょうか。例えば画像のような彩り美しい古典意匠の飛び柄小紋は、染め帯を合わせていただけば街着として気軽にお楽しみいただけますし、袋帯を合わせればちょっとしたパーティなどにも充分対応できる格調と華を備えています。上品な華やか小紋はおすすめのアイテム、合わせる帯次第で年末年始のお出かけを殆どカバーしてくれそうですね。

紬や織物
織りの着物の華やかさは
「素材と織りの光沢感」で決まる
紬や御召・染織作家作品など先染めの着物も、糸質や風合い・色柄などによって豊富なバリエーションがありますね。本結城に代表される真綿系の紬はほっこり素朴、大島や牛首など生糸系の紬は滑らかで光沢のある地風がややドレッシーな趣きです。西陣御召や錦織の着物は改まり感のあるものも多く、技法や文様次第では礼装用となるような気品豊かなお品も見られます。また手間暇を惜しまぬ仕事から生まれた作家作品は、輝くような存在感こそが華。織りの着物がお好きな方でしたら、紬や織物に「華やかさ」を探す、そんな選択も楽しいですね。

2.お正月にはなにか新しいものを、ひとつ
着衣始 (きそはじめ) は元々、お正月に新しい着物に袖を通すことを指しますが、着物や帯だけでなく、帯締めや帯揚げなどの小物、肌襦袢や足袋、半衿等々…帯枕や腰紐等の着付け小物でも良し、お正月には何か一つでも新しいお品を用意しておきたいですね。新しい年の始まりを厳かに待つ心持ちが整います。師走に入れば年末まではあっという間、早めに心がけておくと安心ですね。
3.まずは帯替えからはじめてみる
年末年始はただでさえ出費が嵩むもの・・・。イベントに合わせて着物を選ぶほどの余裕があれば良いのですが、きもの初心者の方にはなかなか勇気がいりますね。そんな方には帯替えから始めてみることをお勧めいたします。
第1章の基本を踏まえた上で、TPOに合わせたそれぞれの「華」を考えながらコーディネートを楽しんでみてはいかがでしょうか。
ここで柄選びのNGポイントをおさえておきましょう。
十二支の帯は年内から年明けまでお使いいただけますが、梅、福寿草、南天、水仙、玩具柄 などの帯は新春・お正月向きです。雪だるまなども冬柄ですが、年が明けてから松の内の間はもう少しお正月感のある華やかなものにシフトした方が良いと思います。


帯替えシミュレーション
季節ごとの帯をクリックしてみてください。
イベントごとに帯を替えるだけで印象が随分と変わりますね。
お手持ちの着物でも、帯や小物合わせを替えて幅広い装いをお楽しみくださいませ。
普段の帯
クリスマスには
洋風唐草文年明けには
おめでた尽くし
普段の帯
雪輪文様で
はんなりクリスマス年明けには
貝合わせ文
普段の帯
クリスマスには
聖夜のイメージで年明けには
宝尽くし
普段の帯
クリスマスには
モダンな袋帯年明けには
松竹梅
普段の帯
クリスマスには
洋の色を取り込んで年明けには
雪持ち南天
普段の帯
クリスマスには
寒色系の染め帯も年明けには
正月遊びのモチーフで
年末年始のお出かけには、心華やぐ装いを。
着物ならではの特別な充足感を、ひとりでも多くの方に楽しんでいただけたらと願っております。お茶の席や目上の方への年始のご挨拶ですと、お相手に失礼のないようにとの配慮が必要ですが、それ以外の場面であればこの季節のお出かけはひとりひとりが主役です。ご自身が素敵な時間を過ごすための「華やかな装い」、心を満たしてくれるそれぞれの装いを自由にお選びになってみてはいかがでしょうか。
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礼を尽くした装いで -色無地・江戸小紋 –

お茶のお稽古をなさっている方でしたら炉開き、口切り、初釜、お子様がいらっしゃる方でしたら卒入学などの式典や成人式、そして結婚式やクリスマス、新年などの集まり…etc.
秋から冬、そして新年・早春にかけては様々なイベントが続き、着物を着る機会も多いことと思います。
現代の生活の中で敢えて「着物を着ること」を選ぶ方々は、ファブリックとしての多彩な美しさ、洋服ではなかなか出会えない贅沢な手仕事、色合わせの妙に魅せられた、等々、拘りをお持ちの方が多いのではと思います。
そんな皆さまにとっては、着物は特別な日のためのものではなくもっと普段の生活に近しいもの。だからこそ大切なお呼ばれのための礼を尽くした装いにも、いつもの自分らしさを活かす、そんな装いが主流になっていくのではないかと思います。
いつもの自分の延長線上でフォーマルを考える…
そんなとき、まず思い浮かぶ着物が色無地や江戸小紋ではないでしょうか。今回は着回しの良さで群を抜く色無地・江戸小紋の装いに改めて注目してみたいと思います。
過去にお届けいたしました特集「今日はきもので。Vol.1 江戸小紋を着る日」も合わせてご参照くださいませ。
染め紋と縫い紋
染め抜きの日向紋で五ッ紋を筆頭に繍いの一ッ紋まで、紋の種類や数によってそれぞれ正装から略礼装まで装いの格が細かく別けられます。
ただ近年では容認の幅が少しずつ広がってきている着物のTPO、ゲストとして出席するホテルの結婚披露宴などでしたら、染め抜きの一ッ紋色無地に重めの袋帯で充分に対応可能と思います。

(染め抜き紋)

地紋のこと
同じ色無地でも生地の質感や光沢によってその表情は大きく異なり、お顔映りやお色の印象も様々です。お部屋の照明や外光などによっても表情が変わってきますので、その微細な変化も楽しみのひとつですね。
光りの加減で見え隠れする色無地の地紋には牡丹唐草や笹蔓などの名物裂の文様、小葵や桐竹鳳凰などの有職文、幾何文や割付文など、あらゆるモチーフが美しい地紋として用いられています。

慶事用にはやはり明るめのお色で地紋もおめでたい吉祥文を選びたいものですが、慶弔両用にとお考えの場合には光沢を抑えた無地縮緬や紗綾型などで落ち着いた紫系や藍系、鼠系など暗めのお色となってしまいます。慶弔共にというよりは、弔事用とそれ以外で別けてお選びいただいた方が選択や着こなしの幅が広がり、楽しくお召しいただけそうですね。

セミフォーマルから街着まで
ここではほんの数例ですがコーディネートのポイントを紹介させていただきます。
華やかなお席へ
光沢の美しい色無地や細かな柄の江戸小紋は、重厚な帯の背景としても万能です。ボリュームのある唐織や精緻な技術が冴える綴織など、装いの主役となるようなお気に入りの帯をお持ちの方は、帯の存在感を際立たせた装いも素敵ですね。

少し改まったお出かけに
ご紹介する機会の多い繍一ッ紋の色無地や江戸小紋には、有職文や名物裂など格調高い古典意匠の織名古屋帯を合わせて。お値段的にもお手頃な西陣のお品、茶道など和のお稽古をなさっている方はもちろん、観劇などちょっとしたお出かけにも、着物らしいきちんとした印象の装いを気軽にお楽しみいただけます。

人間国宝が手掛けた精緻な意匠

人間国宝 中村勇二郎
伊勢型紙 道具彫の人間国宝・中村勇二郎さんが手掛けた精緻な型を用いて、熟練の職人さんの手で糊置きをして染め上げられた伊勢型小紋。
一般的な江戸小紋では目色と地色のどちらかに白を入れますが、京都で染められるこちらの伊勢型小紋は目色・地色共に色が入ります。二色のコントラストが小さく、より無地に近い印象ながら、優れた型ならではの奥行きを感じさせる趣深い景色の品々、こちらもきちんと礼をわきまえた装いとして様々な場面で活躍してくれることと思います。

人間国宝 小宮康孝
江戸小紋といえば小宮さん…人間国宝として大きな功績を遺されたこの方は、先代から引き継いだ高度な技術を次世代に繋ぎつつ、道具や型紙などの存続や改善に尽力なさいました。
精緻な型を冴えた色で染め上げた作品は凛として清々しく、江戸小紋らしい爽やかな気品が着る人をしっかりと支えてくれます。
染めや縫いの紋が入っているものでしたら、お茶の席にも安心です。
一歩控えたおかあさまの装い

合わせる帯次第で表情が変わる着物は、くり返しお召しになっても新鮮な印象です。
気に入ったお色目を用意しておけば安心ですね。
お好みの帯の背景としても
季節の花の帯や作家作品などお好みの染め帯を合わせていただけば、街着やお稽古などにとても重宝いただけます。

もう25年以上も前のことですが、
波野好江さんの「初めて買うきもの」という著書を手に取りました。歌舞伎の世界で生まれ育ち、着物を知り尽くした方ならではの示唆に富んだ内容の一冊でしたが、この方が最初に買う着物を選ぶなら、とお薦めのアイテムがやはり、一ッ紋付の色無地でした。
どなたにとっても、あまりにも当たり前に在る着物かもしれませんが、その種類や着こなしの幅はなかなかに奥が深いもの。
比較的お手頃にお求めいただけるリユースだからこそ、あれこれしっかり試してお似合いのお色、お気に入りの一枚を見つけてくださいね。
※当サイト内の文章、画像等の内容の無断転載、及び複製等の行為は固くお断りいたします。
名古屋帯で過ごす、夏の装い

風薫る五月、気温もぐんぐんと上がってすっかり夏めいてきましたね。
まもなく夏支度!過去に当コラムでは縮や上布、ゆかたなどの夏きものについてご紹介させていただきましたが、今回は素材も織りも様々な夏の帯たちをご紹介いたします。
絹素材の夏帯
夏帯の素材と種類は本当に多種多様です。まずは夏の絹素材からみてみましょう。



絽
地に絽目の入った織りの帯で、袋帯・名古屋帯ともにつくられています。絽目とは経糸の一部を絡めて透き目をつくった織り目のこと。透き目の方向や柄によって竪絽や変わり絽などに区別されます。
絽塩瀬
染め帯の染め下地に良く使われる素材で、絹らしい光沢のある滑らかな風合い。薄手で絽目が入っており、その粗密で透け感も様々です。九寸名古屋帯に仕立てます。
絽綴れ
張りのあるしっかりとしたつづれ地に絽目がはいった素材で、芯の入らない八寸名古屋帯に仕立てます。袷時期の綴れと同様に、絽綴も金銀糸を用いた格調高い柄のお品は、八寸帯でもフォーマル対応が可能です。



紗
透け感の強い紗織りの地に唐織などが重ねられた織りで、フォーマル系の袋帯が多く見られます。 平織りすくい織りなどと組み合わせて柄を織り出す紋紗の名古屋帯などもございます。
粗紗
紗よりも太めの糸を用いたより隙間の大きい織りによる帯。幾何学的な柄や、豊かな個性で人気の高い西陣の帯屋帯屋捨松さんのお品など、カジュアルな八寸名古屋帯がよく見られます。
本羅
人間国宝の喜多川平朗さんや俵二さん、同じく人間国宝の北村武資さんの作品に代表される大変複雑な構造の織りで八寸名古屋帯のかたちです。似たものはあれど、本羅を製織なさる機屋さんは極少数です。
他にも生糸素材ではなく、紬糸を用いた手織りのお品や産地ものの夏バージョン(夏牛首や夏黄八丈、夏久米島など)もつくられています。
苧麻素材の夏帯
苧麻資材の帯は、用いられた糸質や太さ、織りの密度や布の薄さによって八寸名古屋帯も、芯の入った九寸名古屋帯もつくられています。麻素材特有のひんやりとした肌触りは暑い夏にはとても心地良いもの。芯の入った九寸は透け感も少なめですので気温の上がる早い時期から夏を通してその清涼感を楽しめます。また芯の入らない八寸は、素材そのものが確かな涼しさを約束してくれますね。


越後上布
国の重要無形文化財に指定されるお品は、経緯に稀少な手績みの苧麻糸を用いて地機で丹念に織り上げられます。八寸名古屋帯のかたちでは芯が入りませんので熱が籠もらず涼しく風を通し、盛夏にも快適な着心地を約束してくれます。

宮古上布
国の重要無形文化財に指定されるお品は、経緯に稀少な手績みの苧麻糸を用いて高機で織り上げられます。芯の入った九寸名古屋帯に仕立てられることが多く、草木染めの美しい彩りが盛夏の光に美しく映えます。

八重山上布
経糸には紡績の苧麻糸を、緯糸には手績みの苧麻糸が用いられる八重山上布は、苧麻独特のさらりとした風合いと島に自生する植物から得た草木染めによる美しい色が魅力。九寸名古屋帯に仕立てられたものが多く見られます。

能登上布
経緯とも紡績の苧麻糸が用いられ、高機で丹念に織り上げられます。深い藍色や整然と並ぶ絣模様が特徴の能登上布、芯の入った九寸帯が多く見られます。
その他 自然素材の夏帯

芭蕉布
沖縄の風土から生まれた芭蕉布は、バナナの一種である糸芭蕉から大変な手間暇をかけて取りだした繊維を用いて織り上げられる美しい布。水に強く熱を放出する能力に優れた素材で、こちらもその技術が国の重要無形文化財に指定されています。
他にも芭蕉布(糸芭蕉の繊維)、シナ布 (シナの木の樹皮)、藤布 (藤の蔓の繊維)、葛布 (葛の蔓の繊維)、楮布 (和紙の原料でもある楮の繊維)などの特殊な植物素材は、原始布或いは古代布と呼ばれ、縄文の頃から用いられてきたと言われる布です。 上記のような素材は、糸そのものに強い個性があり、ナチュラルで野趣豊かな布味が魅力ですね。

「特集コラム:芭蕉布を着こなす」 さっと見渡してみても、こんなにもバラエティに富んだ夏の帯、 今年はどんなお品をお選びになりますか?
夏帯の時期とは

夏帯を使う季節については、夏きものと同様にいろいろなきまりが気になりがち。でも改まった装いが必要な場面でなければ、そんなに気になさらなくても大丈夫です。 基本は、6月以降から9月半ばあたりを目安に。また何月何日等の細かい季節に合わせるのではなく、合わせる着物が「単衣や薄物」であること、でしょうか。
以前は例えば「麻は7月と8月に」と言われていましたが、近年はずいぶん気候が変わってきていますので、洒落着でしたら5月末に単衣と合わせて芯の入った麻地の染九寸帯などをお締めになる方もいらっしゃるのでは?きものと同様に体感でお考え頂いて良いと思います。
特に最近の西陣の帯などでは、連休明けくらいから夏を通して秋口までお使い頂いても違和感のない、薄手で軽い透け感があるお品等、スリーシーズンお使い頂けるタイプの帯も増えています。
素材や織りのバリエーションが多いだけに難しく考えがちな夏の帯、ご自身の感覚で気軽に楽しんでくださいね。
涼やかに見せる 帯まわり
この時期にしか使えないけれど、独特の風情を備えた夏帯はとても魅力的です。
様々な素材や地風を知ることで夏きものもより幅広くお楽しみいただけるのではないでしょうか。
続いては、一点添えることで涼を運ぶ帯まわりの小物たちをご紹介いたします。

帯留めは夏帯との相性がとても好いですね。透明感のあるガラスや石、細工の凝ったアンティークの帯留めなど、確かな存在感のある夏らしい一品に拘ってみてはいかがでしょうか。装いに大人の気品を添えてくれることと思います。 こちらのお写真では、きもの青木銀座店のご近所、アンティークモールに入っていらっしゃる「夕顔」さんから素敵な帯留めをお借りいたしました。

繊細な絹糸の房がさらさらと涼しげなタッセルチャームは、夏小物で活躍する籠バッグや日傘、扇子などに結いてお洒落を楽しんでみてはいかがでしょうか。見た目の涼やかさだけでなく、ふとした時に肌を滑る房のやさしい触感に心もやすらぎ、小さなお守りのようです。
こちらは丁寧な手技で美しいお念珠を創られている「ひいらぎ」さんのお品。細部まで拘った洗練された表情が素敵ですね。
タッセルチャームはこちら

帯枕にも天然素材を取り入れて。こちらはへちまで作られた帯枕。へちま独特の質感と程よい柔らかさが夏帯ととても馴染みが良いのです。
へちまは軽くて吸湿性も高く、通気性にも大変優れていますので夏のお太鼓結びを快適に支えてくれます。ガーゼもへちまも水を通して洗えますので、汗の気になる季節にも気持ち良くお使いいただけますね。
へちまの帯枕はこちら
気軽なお出掛けでしたら帯枕も外してしまいましょう。銀座結びなどの変わり結びで少しでも熱の籠もらない涼やかな背中を維持したいですね。名古屋帯は半幅帯よりもボリュームがありますので、ヒップラインなどもカバーできるのが嬉しいところ。博多帯や麻の帯など、素材によってとても表情豊かになりますので、いろいろとチャレンジししてみてお気に入りの変わり結びを習得してみてくださいね。

きもの青木 おすすめの夏帯


栗山工房の夏帯
1952年、栗山吉三郎さんによって始められた型染めが栗山紅型です。和染紅型とも呼ばれ、沖縄の紅型の魅力を京都らしい洗練された感性を通して表現、型彫りから糊置き、彩色など全ての工程が工房内で手作業によって行われています。型染めの楽しさをたっぷり楽しんでくださいませ。
栗山工房の帯はこちら
本場筑前博多織 八寸名古屋帯
博多八寸名古屋帯は、紬や小紋、浴衣から夏織物、夏小紋など幅広い装いに合わせて、一年を通してお使い頂けるとても重宝なお品です。特に昔ながらの独鈷・華皿に縞を配した献上柄は、格調高くも独特の小粋な風情を備え、装いをきりりと引き締めてくれますね。涼しげにお使い頂ける綺麗な淡彩を取り揃えましたので、ぜひご覧くださいませ。
博多帯の商品はコチラ
きもの青木には日々多くの着物や帯が行き交い私たちもたくさんの素材に触れておりますが、やはり上布や芭蕉布など、この季節独特の織りには別格の魅力を感じます。自然素材のものは着込むほどに身体に馴染んでいきますし、織りの多様性や見事に季節を映し出した柄付けなども実に楽しいものが多いですね。
皆さまにも素敵な夏帯との出逢いがありますように。 ※2019年5月発行
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