今日は着物で。 vol.1 江戸小紋を着る日

京都や銀座など有名どころのみならず、地方の古い町や秘境まで海外からの来訪者が増え、すっかり国際色豊かになった近年の日本。街を歩けば様々な言語が賑やかに飛び交っていますね。2020年には東京オリンピックという大きなイベントを控えていることから、和文化の見直しが各方面で一層盛んになっています。「和」が注目される今、これを機に着物を楽しんでみたいとお考えの方も多いのではないでしょうか。
こちらのコラムでは、現代で着物をお召しになるいろいろな場面を想定しながら、きもの青木がおすすめする「おもてなし」や「およばれ」に相応しい装いをご紹介したいと思います。

初回は〈江戸小紋〉を取り上げてみたいと思います。
着回しの良さではピカイチの優等生とも言える江戸小紋。その由来は江戸時代、全国から江戸に集まる諸大名が、各藩から着用を定められた裃に染められた柄と伝えられていますね。遠目からは一見無地のように見えますが、近くに寄ってようやく目で捉えられるような精緻な柄は、奢侈(贅沢)禁止令で抑圧された武士や町人たちの洒落心が求め育てたもの。

※画像はWikipedia 東海道五十三次 (浮世絵)より引用

型紙を彫り、それを染め上げる職人の高度な技術はこの時代にとどまるところなく進化し、洗練されました。
武士の正装の流れを汲む〈定め小紋〉柄の江戸小紋は、紋の有無や帯合わせ次第ではとても格の高い装いとなります。また町人の遊び心が光る〈いわれ小紋〉柄は楽しい街着に最適です。

大切なのは柄のもつ意味。 まずは江戸小紋の柄の基礎知識をきちんと把握しておきましょう。

 

小紋三役:

小紋三役とは各藩でのみ使用を限られていた「定め小紋」柄から選ばれた三つの柄。同じ鮫や行儀・通しでも「極」とつくものはより細かい型紙が用いられており、格上となります。紋を入れれば略礼装としても着用できますので、おもてなしやおよばれの場面では大変重宝しますね。

行儀
(仙台藩伊達家)

斜め45度の角度で整然と並ぶ点の柄。お辞儀の角度とも例えられ、行儀正しい秩序や礼を尽くす、
という意を含む。

角通し
(信濃戸田家)

縦横垂直に規則正しく並ぶ点の柄。縦にも横にもまっすぐ筋を通す、という意を含む。


(紀州徳川藩)

小さな点が扇状に並び、鱗のように重なった柄。鮫皮のように堅い鎧に例えられ、魔除けや厄除けといった意を含む。

 

小紋五役:

小紋三役に下記二柄を合わせ、五役とされます。
こちらも紋を入れれば略礼装としてお召しいただけます。

大小霰

もとは薩摩島津藩の定め柄。
空から落ちて弾け跳ぶ霰のように、勢いづけの意を含む。

万筋

極細の縞が垂直に走る柄。
まっすぐ筋を通す、という
意を含む。

 

三役・五役といった裃由来の「定め小紋」とは異なり、小紋柄は「いわれ小紋」と呼ばれています。その柄の種類は数千にものぼるそうで、生活用品や野菜、動物、自然、吉祥模様など、あらゆる事物がモチーフの素材に使われています。

小さな点の連なりから生まれる柄には、子孫繁栄や無病息災などさまざまな願い事や判じ物が隠されています。ひとつひとつの柄を読み解くことから周りの方との素敵な「会話」が始まりそうですね。ウィットに富んだ江戸庶民の洒落を感じさせる装いで、心豊かな楽しい時間をお過ごしいただける事と思います。

 

一見シンプルな極小の柄にも、いろいろな意味がある事が分かると、選ぶときにも楽しさが広がりますね。
続きまして、様々な場面に相応しい江戸小紋のコーディネートをご紹介してみたいと思います。

 

 

scene1: お茶席での江戸小紋

紋付色無地を基本とするお茶席ですが、江戸小紋の凜として端正な景色もお茶席には美しく映えるもの。無地のように見えつつも、極細かな柄のどこか揺らめくような表情が魅力的ですね。格高の織名古屋帯や金銀糸が控えめな袋帯などを合わせれば、格調高くどなたからも好感度の高い落ち着いた装いの完成です。そろそろ和のお稽古を始めてみたいとお考えの方、最初の一枚は江戸小紋になさってみてはいかがでしょうか。


ピンクベージュの穏やかな〈行儀〉に優しい色合いで織り出された格子を合わせてモダンな印象に。

着物C-1331     帯K-4967


濃色の〈鮫〉には源氏香の名古屋帯。着物と相性の良いモダンな色遣いの帯を合わせて、すっきりとした上品な印象に。

着物C-1305     帯K-4913


三役〈角通し〉に格調高い天平鳥襷文に間道を重ねた袋帯。凛として落ち着いた装いがお席に清々しさを運びます。

着物C-1393     帯L-3737


女性らしい淡いピンク色の〈万筋〉に、濃色の帯や寒色の小物を合わせれば、甘さを程良く抑えた優美な印象に。

着物C-1104     帯K-4221

 

scene2: お食事会での江戸小紋

気心の知れたお友だちとのランチ会でも、ちょっと贅沢なディナーでも、江戸小紋でしたら帯合わせだけで気軽にTPOを調整できます。カジュアルな会でしたら季節の染め帯を、盛装が必要な場面でしたらフォーマル性の高い帯も合わせられるのが江戸小紋の強みですね。またホームパーティでも、ちょっと頑張って着物でお迎えすれば特別感がぐんとアップ!紬では華やかさにちょっと欠ける…付下げや訪問着では仰々しい…。そんな時は、一歩控えた感を備えつつも格調ある江戸小紋スタイルが活躍してくれますよ。


籠目のように広がる〈笹竹文〉が華やかな江戸小紋。透明感のある帯を合わせて柔和な印象に。

着物C-1373     帯K-5210


明るい彩の〈角通し〉にはエレガントで気品のある織名古屋帯。お部屋がパッと華やぎますね。

着物C-1387     帯K-5297


灰味を含んだ水色の〈福良雀〉には西陣の名門機屋の織名古屋帯を。袋帯に準ずる格高の帯合わせですから少し気の張る場面でも安心です。

着物C-1400     帯L-3763


黒色の〈角通し〉には一歩控えた有職文の帯。寒色系の小物を効かせて都会的な装いを。

着物C-1388     帯K-5308

 

scene3: アテンド時の江戸小紋

たとえば、海外からの客人を寺社仏閣などへご案内する時に、和装であれば建物やお庭などとの調和は格段に美しく、きっと喜ばれることと思います。素材や織りについての説明を外国語に置き換え、理解していただくのはなかなか労を要しますが、色や柄の話題でしたらぐんとハードルが下がりますね。帯合わせも花鳥風月を題材とした染め帯などを選べば、江戸小紋の興味深い背景と共に日本の四季の感覚など、和の文化に寄り添った着物の魅力をお伝えることができると思います。

海外の多くの方にとっては、日本のイメージは映画や本・アニメーションなどからつくられたものと思いますが、今に生きる着物を通して見る和の世界が、日本への関心をより深めるきっかけとなりましたら、とても素敵ですね。


可愛らしい〈梅鉢〉の江戸小紋。植物のモチーフが大らかに織り込まれた袋帯を。ふくよかな織りの表情と相まって生まれる穏やかな華を楽しんで。

着物C-1398     帯L-3758


こちらも〈梅鉢〉の江戸小紋。仄かな紫みがエレガントなお色には、重厚感のある名物裂の織名古屋を合わせて格調高く華のある装いに。

着物C-1399     帯K-3762


極細で〈よろけ縞〉を表現した美しい江戸小紋。法隆寺伝来の太子間道の帯を合わせて、歴史を語る糸口となる装いを。

着物C-1406     帯K-5343


スーツ感覚で着られる墨色の〈万筋〉には、日本画をそのまま映したような染め帯を合わせて風流な趣に。

着物C-1222     帯K-4638

 

最後に、きもの青木が扱う江戸小紋についてご紹介いたします。
きもの青木では大きく別けて〈機械染めのお品〉と〈手作業による染めのお品〉、2つの種類を扱っています。

〈機械染めのお品〉は
反物からお仕立てをした新品未使用品が大半を占めます。現在は数としては〈機械染め〉がメインとなっておりますが、現代の女性の標準サイズに沿った仕立てによるお品は状態も良く、お稽古着としても街着としても安心してお召しいただけますね。大変お手頃な価格でご紹介させていただいております。

〈手作業によるお品〉は、
昔ながらの手彫りの伊勢型紙を用いて1反の長さに繰り返し型付けをした上で、引き染めやしごきによって地染めしたもの。伝統工芸士さんや人間国宝の熟練の技術によって染め上げられた逸品をご紹介しています。リユースならではの手の届きやすい価格となっておりますので、こちらもぜひご覧くださいませ。

 

現代の暮らしに寄り添う江戸小紋の装い、いかがでしたでしょうか。
時を越えて尚も親しまれる江戸小紋の魅力を、感じていただけましたら幸いです。
きもの青木 の江戸小紋商品一覧は、コチラでご参照くださいませ。

きものコーディネート講座vol.3:この夏は「ゆかた」の一歩先を目指して。

着物歴の浅い私、きもの青木に入社して初めての夏を迎えます。
この夏こそは、花火大会やお祭りだけではなくて、もっとゆかたで色々なところへのお出掛けを楽しみたいな、みんなよりちょっと小粋に着こなしたいな、と今から心踊らせています。
でも、ゆかたにもいろいろとルールがあるのかしら・・・?
そこで今回は、着物上級者の大先輩から手ほどきを受けながら、
きもの青木がおススメする〈ゆかた〉の一歩先の着こなしをご案内していきたいと思います。

 

「よく使われる"浴衣"という字はそもそも当て字で、湯帷子(ゆかたびら)の略語なんですね。元来は文字の如く、湯上がりにまとう〈くつろぎ着〉でした。ですから吸水性の良い綿素材が基本で、夕方以降ごく近所までというのが許容範囲とされていました。現代においては、ジーンズが作業着からお洒落着にまで進化したように、時代と共に〈ゆかた〉で出かけられる場所はぐんと広がりましたね。それでも街の中でお洒落着として楽しむ場合は、とにかく"寝巻き風"な要素を徹底的に取り除いていくことが大切だと思いますよ。」

「ポイントとしては3つ。素材、色や柄行き、そして帯や小物合わせでしょうか。」

 

"ハリ" のある上質素材でキチンと、"透ける"素材で清涼感を。

「素材として一番馴染みがあるのはやはり綿素材ですよね!自宅で手軽にお手入れが出来ますし。」

「そう。綿の中でも、綿コーマと呼ばれる平織りのものがもっとも一般的ですね。吸湿性もあって肌に柔らかなのですが寝巻き風にならないためには、シャキッとした"ハリ感"を持っていることが大切です。ヘタらない上質な生地を選びたいですね。ゆかたの一歩先を目指すのであれば、綿100%でも織り方に工夫がされている綿絽や綿紅梅は、夏着物の特徴でもある"透け感"があり、帯や衿元によってはワンランク上の着こなしが楽しめますよ。」

「綿は汗を吸う一方で、炎天下で汗ばむときにはちょっと重たく感じることもあるのですが・・・。」

「では、麻を一度トライしてみてはどうかしら。
麻はざっくりとした"ハリ"のある素材感で肌にまとわりつかないし、綿より"透け感"もずっとあります。シワが気になるようであれば、糸に強い撚りをかけている縮みであればさほど気になりませんよ。その代表格が小千谷縮。小千谷縮には先染め、後染めと様々なバリエーションがあり、小紋感覚で着こなせるものも多くあります。麻も基本的にはご自宅でお手入れ出来ます。着れば着るほどふわりとしなやかに馴染む特性も心地よいですよ。 麻以外のおススメは、もうほぼ夏着物と言ってもいいもので絹紅梅。絹ならではの羽のように軽い着心地に、シャリ感と強い"透け感"で見た目通りの涼やかさ。絹物にしてはお手頃なのも嬉しいですね。是非、街での大人のお洒落着として楽しんで下さい。絹紅梅のお手入れはプロにお任せしてくださいね。」

素材別の透け感画像を用意してみました。こうやって並べてみると、風を通す素材感が分かり易いですね!

  • ① 綿コーマ: 太さにムラがない強い細番手の綿糸を使って平織りにした、艶のある柔らかな肌触り。
  • ② 綿絽:「絽」は緯糸数本おきに隙間を作りながら織り上げる夏の代表的な生地。
         綿の糸を「絽」に織り上げた素材。綿コーマよりワンランク上。
  • ③ 綿紅梅:細い綿糸の間に太い綿糸を織り込み、格子状に凹凸を織り出した表面感豊かな素材。
         凹凸つまり勾配があることから、転じて紅梅と名付けられる。綿のゆかたの最高級素材。
  • ④ 麻縮:縮みとは撚りが強い経糸で織った布を湯もみすることで「しぼ」を出した織物。
         麻の糸で織り上げた代表的な夏素材のひとつ。
  • ⑤ 絹紅梅:綿紅梅と同じ手法で、細い絹糸の間に経緯とも一定間隔で太い綿糸を織り込んで格子状の畝がある生地。
         透け感が非常に強く、ゆかたの最高級生地とも言える。

着ていきたい場所をイメージしよう。

「生地の特徴が分かったところで、色や柄、染めなどに注目してみたいと思います。ついつい自分の好みのものを選んでしまいがちなのですが。」

「柄や染めによって、ゆかたらしく着こなすのか、それとも小紋風に着こなすのか、実は着こなしの岐路にもなるので、着る目的をちょっと考えてみて下さいね。大胆な柄行きは花火大会などでも艶やかに映え、細やかな文様は半衿や名古屋帯を合わせると夏着物さながらの趣になります。

また、基本的には染めの技法が緻密で高度なものになるほど格が上がります。例えば麻でも染めの技法によって、絹紅梅より格が高いものもありますので、生地と染めはセットで考えて下さいね。・・・とは言っても、あまり難しく考えすぎずに、着ていく先にふさわしい着こなしを心がけることが大切だと思いますよ。

色に関しては、顔映りの良さなど人それぞれに似合うものはもちろんありますが、目にも涼やか、というのが夏着物の基本であり、周囲への配慮がなされているという意味でも"粋"なのではないでしょうか。」

一枚のゆかたを何通りにも楽しむ

「綿のゆかたに半幅帯を合わせるということが多かったのですが、同じゆかたをワンランク上に着こなしたいのですが。」

「お話してきましたように、ゆかたと言っても幅広くありますので、まずはそのゆかたの持ち味を生かすということはとても大切です。コーマ地に大胆な柄行きでしたら、やはり半幅帯に素足、というのが似合いますね。でも、着こなしで簡単に変化をつける事も楽しみのひとつ。例えば、帯を名古屋帯にしてみるだけでぐっと雰囲気が変わります。半衿をつけていない場合には足袋は履かなくてもいいのですが、足袋を履くだけで〈きちんと感〉が上がりますし、出先でどこかのお宅へ上がる場合など、裸足はやはり失礼になりますから、お出かけ先を考えて足袋を履くかどうかは考えてみて下さいね。」

半幅帯、裸足の合わせ

名古屋帯、足袋の合わせ

 

「名古屋帯に、さらに半衿をつけるともっと街着らしさが出ますね。半衿をつけたら足袋をお忘れなく。バッグなども衿や帯のチョイスと合わせて、全体のバランスがちぐはぐしないようにしましょう。」

半衿なし

半衿あり

 

「イメージが湧いてきました!」
「最後に、ゆかたをちょっとグレードアップさせるのにふさわしい帯を教えて下さい。」

博多の半幅帯

「最初の一本であれば、博多帯をおススメします。シャリッとした手触りの博多帯は締め心地がよく、出掛け先で動き回っても緩みにくいですよ。ゆかただけではなく、小紋や夏紬とも相性が良いですし、色によっては夏だけではなく通年活躍する万能選手です!博多織の中でも、紗の入った八寸帯は、夏にしか着用できませんが、より軽やかでゆかたから夏着物まで幅広く活躍するので、こちらもおススメです。博多帯は半幅など、バリエーション豊富にあるので、変わり結びなどでさらに"粋"な装いを楽しむこともできますね。」

「涼しい着心地を求めるのであれば、麻の帯が断然おススメです。麻はざっくりとした地風で、こちらも締め心地が良く初心者にも扱いやすいです。色や柄も豊富なので、ご自身の個性を発揮しやすいのも特徴です。」

小千谷縮の帯

麻絽の帯

「他にも粗紗の八寸のように芯が入らないものも軽やかで風を通しますし、表情豊かな風合いが楽しめますね。 絹紅梅のように小紋感覚で着られるようなものは、夏着物と相性の好い絽塩瀬を合わせてみても上品ですね。」

粗紗八寸帯

絽塩瀬の帯

 

〈ゆかた〉とひとことで言ってもなかなか奥が深いのですね。大人としての品位を大切に、この夏は一歩先の〈ゆかた〉の着こなしを楽しみたいと思います。皆さまもいつもの着こなしをちょっぴりアップデートして、〈ゆかた〉の一歩先へ、いかがでしょうか。

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きものコーディネート講座vol.2:春を運ぶ朗らかな装いを。

立春を迎え、少しずつ陽差しも明るくなってきます。梅や水仙も咲き始めて、季節が春に向けて一歩一歩進んでいることを実感しますね。きもの青木の商品も春いろ一色になってきました。
あれこれ勉強中の新入社員達から相談を受けながら、今回は春らしさを楽しむ装いをご案内してまいりたいと思います。

「春の季節柄には、具体的にどんなものがあるのでしょうか?」

「1月〜4月にかけて梅や水仙、菜の花、木蓮、桃、レンゲ、土筆、ミモザ、チューリップ、そして桜など、様々な花が順々に咲きはじめますよね。このような春に咲く花々や蝶、そして桃の節句柄などが代表的です。ただ、春に咲く花と一口に言ってもそれぞれに花期は違いますから着物のお洒落は花期よりもひと足早め、できれば着用は『咲ききってしまう前まで』と覚えておいてください。そうは言っても南北に長い日本、場所によって季節の訪れにも幅がありますから、そんなに神経質にならなくても大丈夫ですよ。」

「桜の着物や帯に憧れますが、選ぶ時に気をつけることは?」

「日本人が大好きな桜、写実的に描かれたものから大胆にモチーフ化されたものまで表現も幅広いですね。花期の短い桜ですが、満開の花枝・花吹雪・花弁だけのものなど、これほど様々な描写がなされる題材も珍しいのではないかと思います。桜の柄については拘る方が多いだけに意見の分かれるところですが、満開の頃ならば、写実的な描写のものは花吹雪や花弁だけの画を選ぶなど、少しだけ時期を先取り。モチーフ化された柄行きでしたら、あまり季節を気にせずにお使い頂いて良いのではと思いますよ。」

「着用の季節が限られる柄行きの着物や帯は、初心者にはちょっと難しいような気がしますが・・・?」

「皆さん、着るときを逃してしまうのでは?という心配をなさるようですね。でも季節柄は初心者の方にこそおすすめしたいと思います。気に入った柄行きでしたらその季節が待ち遠しく楽しみになりますし、一年に一度は表に出してあげなくちゃ!と頑張りたくなるもの。きっと着物を着る機会が増えると思いますよ!」

 

「季節感のない無難な着物と帯しか持ち合わせていないのですが・・・」

「小物使いだけでも随分と印象が変わりますよ。挿し色としてはシャーベットトーンを取り入れてみてはいかがでしょうか。清々しい黄色、オフホワイト、淡いピンク、優しい黄緑系などの彩りは色そのものが春を感じさせますね。また、春花の柄が入った帯揚げや半衿などでも春らしさを楽しめますし、振りからちょっと見える襦袢に春色をしのばせてみるのも、楽しいですね。」

「可愛らしくなってしまう春色や柄行きに少し抵抗があるのですが・・・」

「お洋服の場合、シックで大人っぽい装いが好きな方には、春らしいカラーや柄行きが苦手の方も多いですよね。でも和装ではそれが当てはまらないから不思議なところ。面積の少ない帯締めや帯揚げ、帯留めなどワンポイントに春を取り入れるだけでもさりげない季節のお洒落が楽しめますし、桜の柄ひとつとってもさまざまな手法により趣が全く異なりますので、お好みに合う意匠が必ず見つかると思います。お好きな作家さんの作品から探し出してみる、というのも楽しいのではないでしょうか。」

 

「普段は着物を着ない方でも、春の行事では着物を着たいのですが・・・と、よくお客様から相談を受けるのですが・・・」

「そうですね。特にお問い合わせが多いのはお子様の卒入学式などでしょうか。
まず卒業式では〈感謝〉の意も含まれている為、華やか過ぎる装いは控えた方がよいですね。落ち着いた色味の色無地や江戸小紋に袋帯を合わせた装いなどが、礼を尽くした母の装いとして好ましいのではないでしょうか。出来れば紋付きがおすすめですが、今はさほど気になさらなくてよろしいのではと思います。
入学式に関しては春らしい色味の色無地や江戸小紋、春の柄行きが穏やかに描かれた付下げなどがおすすめです。あくまで主役はお子様ですので、豪華な訪問着などはお避けになられた方が安心です。」

「ただ、地域や学校の校風などによっても傾向が異なりますので、周りの方がどのような装いをされるのか、少し様子をリサーチなさってからお考えになると良いかと思いますよ。また、お祝いのパーティーなど晴れやかな場面では、春らしい季節柄の訪問着で華やいだ装いを存分に楽しんでいただきたいですね。」

 

具体的なコーディネートをご紹介いたします

 

coordinate1   シンプルな着物には春帯で変化を楽しんで。

  • # 01 優しく可愛らしい春:
    桜花と花弁のみを控えめに散らした染め帯です。綺麗な苗色もまさに春を告げるお色目、着物の落ち着いた色味を優しく引き立てています。どんな着物も春衣に変えてしまう、そんな素敵な力を感じさせる一点ですね。
  • #02 はんなりとした春:
    絞りで象られた大ぶりの桜一輪がお太鼓を飾る個性的な染め帯です。黒と白にほっそりと赤を効かせた、はんなりとして女性らしい趣きのお品。小物で花の色を添えて、心に残る春の装いです。
  • #03 華やかな春:
    落ち着いた色遣いながら、デザイン性の高い華のある帯ですね。枝や葉は地色に溶け込ませ、大ぶりの桜花がより強調されています。こちらでは濃い色の帯締めでシックに引き締めていますが、明るいお色目を使って頂くとまたすっと趣きが変わって新鮮ですよ。 

 

#01 優しく 可愛らしい春

【帯 K-4696】

 

#02 はんなりとした春

【帯 K-4709】

 

#03 華やかな春

【帯 L-3367】

 

 

coordinate2   落ち着いた大人の春らしさをとり入れて。

  • #01 空木さんの穏やかな春:
    高久空木さんの塩瀬地の染め帯です。優しい風に乗ってふわりと舞い降りた蝶の姿に穏やかな春を感じさせますね。シンプルながら滲みが美しい色彩と完成度の高い構図が作家作品ならではの存在感を見せてくれます。蝶のモチーフならば早春から晩春まで長くお使い頂けますね。
  • #02 風情豊かな大人の春:
    力強い水の流れにはらりと散った桜花が浮かぶ染め帯です。鮮やかなグリーンの帯締めを合わせて春らしく瑞々しい表情を。装いを凛と引き締める黒地の帯は、淡色から中間色の着物ならどのような地色も綺麗に調和します。散りゆく桜の花ならば、比較的長くお楽しみ頂けますね。
  • # 03 清々しい春:
    名物裂の笹蔓文は特に季節の縛りの無い格調高い意匠ですが、淡い彩りが清々しい印象です。淡彩の着物や春色の小物を合わせれば春らしく、焦茶など濃地の着物に載せれば秋のイメージの装いに。着物や帯揚げ・帯締めで季節感も自在です。

#01 空木さんの穏やかな春

【帯 K-3641】

【バッグ G-854】

#02 風情豊かな大人の春

【帯 K-3757】

【バッグ G-852】

 

coordinate3   小物使いで変化を楽しむ。

春いろのグラデーションが美しい帯締めや帯揚げを合わせて、やさしい春の表情が楽しめます。

いかがでしたでしょうか。今回の春の装い講座は、この辺りで。
最後に、きもの青木がオススメする春のアイテムを少しご紹介致します。

春にオススメのコレクション

桜や梅など、季節花の帯

入学式や卒業式の列席にふさわしい着物と帯

春の宴にふさわしい訪問着など

皆さまも、春を運ぶ朗らかな装いで、楽しい着物ライフを過ごされますように。