きものコーディネート講座vol.1:秋のお洒落を楽しむ

9月になりましたね。カンカン照りだった太陽が日に日に短くなり、夏が終わりゆく寂しさと、実りの秋の訪れへの期待が交錯します。着物歴がまだまだ浅い私、きもの青木新入社員Aにとっては、6月から9月までの4ヶ月間の着物の着こなしが一番難しく、特に9月は、時にまだ暑い日もあったり、肌寒い日もあったりで、さぁ、何をどう着よう?!と悩んでしまいます。今回は、着物ビギナーの私Aが着物上級者Nさんからレクチャーを受けながら、9月のお洒落着の着こなしをご案内していきたいと思います。

A「9月に入るとお着物は単衣で、夏の薄物はもう着れなくなりますか?」

N「フォーマル系や改まったお席では、基本的に薄物は9月9日の重陽の頃までとした方が安心ですが、昨今の気候では9月の残暑もかなり厳しく、現実的でない場合もありますね。それに北海道と沖縄では季節が大分ずれているタイミングですから、その時々で薄物を上手にお召しになる上級者もいらっしゃいます。例えば、透け感が少ない着物に、秋の帯や小物を合わせたりと、着こなしの工夫をされていますよ。9月中でしたら、体感に合わせて柔軟に対応しても良いのではと思います。」

A「なるほど。でも私のようなビギナーは、早めに単衣に切り替えた方が安心出来そうですね。」

N「お茶席やお呼ばれでしたら、薄物は9月前半までを目安にしたらいかがでしょうか。」

A「半衿や襦袢にも単衣向きなものがありますか。私は絽の襦袢に絽塩瀬の半衿で過ごしてしまっていました。」

N「それでも、大丈夫。でも、真っ白の絽の襦袢だと、9月半ばを過ぎると見た目にも寒々しい感じがするので、透け感の少ない絽縮緬がオススメですよ。半衿も、絽縮緬やシボのある楊柳が似合いますね。」

 

A「着物を単衣に変えたら、帯や小物はどのように変化させていけば良いでしょうか。」

N「これも、絶対のルールはないから、Aさんのような初心者の方は悩んでしまうと思うのですけど、基本的には、季節を少しずつ先取りしていく、と考えると分かりやすいですよ。夏に向かう頃なら、帯を夏素材にしたら小物も徐々に夏素材へ。秋口ならば帯を袷用に変えたら徐々に冬素材に、と季節の変化に対応していくイメージ。」

A「なるほど。お洋服だと、秋の初めは、柄や色合いは秋らしいけれど、涼しげな生地感、秋の深まりと共に、温かみを感じる風合いのものを選びますけど、考え方は似ているのですね。」

N「その通り。
季節に対する細やかな心配りをすることそのものを
楽しみたいですね。」

 

6月と同じ単衣を、秋らしくコーディネートしてみましょう。

 A「実は、私はまだ単衣を1枚しか持っていなくて、6月も9月も着た切り雀なんです・・・。帯でがらりと雰囲気を変えてみたいのですが。」

N「皆さん、最初はそうですよ。それに、着物一枚帯三本というくらいで、帯や小物との合わせで同じお着物を何通りにも楽しむというのがお着物の醍醐味ですから。いくつか具体的なコーディネートを見ていきましょう。」

 

#1シックに。

オフホワイトに紺色のぼかしが入った紬地に、すっきりとした麻の葉文様の単衣。
シックに着こなしてみましょう。着物A-1919

6月には、麻地に白抜きの絵柄が散らされた琉球藍の名古屋帯K-4173を。清々しく、爽やかに。
9月上旬からは、絹に麻を加えた地風の洒落袋帯L-951でさらりと。萩の葉の図は意匠化されている植物文ですので、季節はさほど問いませんが、風合い、色柄共に、秋単衣の頃がまさに打ってつけですね。
9月半ば以降には、袷の染めの名古屋帯K-1009を。こっくりした朱みを帯びた茶系の地に、ぷっくらとした兎の白さが清々しく、秋らしさが詰まった一枚ですね。今年の中秋の名月は10月4日。こんな装いで秋の美しい月を愛でたいものですね。

 

#2 キュートに。

オフホワイトの地に黒と赤の絣が織り出された紬。着物A-1013
ポップでキュートな装いに仕上げでみましょう。

6月には、意匠化された薔薇の花をぽんぽんと配した愛らしい絽塩瀬の染名古屋帯K-4207で。
9月には、とぼけたような表情のフクロウがなんともユーモラスな墨色の紬地の名古屋帯K-1849で。秋の夜長を感じさせます。単衣から袷まで着用できますよ。
もう1つは、朱系の縮緬地の名古屋帯K-1439を。秋に豊かに実る葡萄とアケビが野趣溢れる風情で描かれていますね。帯締めをダークなお色にすれば、うんとシックにも着こなせますが、明るい色を差し込むと、活力溢れる装いになりますよ。

いかがでしたか。今回の秋のお洒落着の装い講座は、この辺りで。
最後に、きもの青木がオススメする、秋の装いにぴったりの洒落帯コレクションを
ご紹介致します。

秋にオススメの洒落帯コレクション

葡萄や秋の月に兎と、季節感溢れる装いを。

秋草や紅葉など、野山に訪れる秋を纏って。

こっくりとした秋色を取り入れて。

皆さまも、深まりゆく秋、どうぞ楽しい着物ライフを過ごされますように。

※2017年9月発行
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