湯の沸く音
一座建立の佇まい
整然とした空間で
丁寧に点てられた
一服のお茶に心を和ませる
そんなひと時を求めてお茶のお稽古に励まれる、またこれから始められる方も多いのではないでしょうか。
湯の沸く音
一座建立の佇まい
整然とした空間で
丁寧に点てられた
一服のお茶に心を和ませる
そんなひと時を求めてお茶のお稽古に励まれる、またこれから始められる方も多いのではないでしょうか。
茶の湯は日本文化を結集した総合芸術とも言われます。陶芸、書跡、建築、染織、料理など、私たちが古来から高めてきたあらゆる道に通じます。そして、培われるおもてなしの精神性。一服のお茶を挟んで点てる側、戴く側が同じ空間を共有し、互いに相手を思う「和」の心が生まれてゆくのです。
その精神性こそが茶の湯の心と言えましょう。
着物はそんな茶の湯の心を演出してくれる重要なアイテム。
繰り返される「型」から生まれる澱みない動き、その美しい所作も着姿から始まります。
いつもより気持ちも新たに、お稽古へ、お茶会へ、ぜひ着物で出かけませんか。
当コラム「お茶ときもの、あれこれ」では、お茶と着物にまつわるあれこれを毎回テーマにしてお届けしていきたいと思います。
初回はまずお茶を始めてみたい、または始めたばかりという方に、ご覧いただきたい、押さえておくべきポイントをまとめてみました。
必要な一枚を選ぶために、ぜひお役立てくださいませ。
お茶の所作は、着物を着て動くことを前提としたもの。 そのため身体に沿いやすい、動きが滑らかな染の着物、いわゆる柔らかものが好まれます。
対するかたもの、いわゆる紬は張りがあるため動きが固く見えたり、 膝行(しっこう、にじり)においても擦れ音が気になったりしますので、所作に慣れてから 場合に応じて着用するのが良いでしょう。
お稽古なら紬でも可という場合は、反物を織ってから染める後染めのものが風合いが柔らかで動きやすいと思います。
そして何より清潔感が大切。白足袋、白半衿を着用し、帯留や指輪など、お道具を 傷つける恐れのある装飾品は外しましょう。
また一般の着物の決まりと同じく、季節は先取りが基本。 衣替えはなるべく暦に準じて行い、時候に応じた色や柄、 模様や紋様を早めに取り入れましょう。
装いはお茶席の格に合わせます。 結婚式でも新郎新婦の両親や仲人が第一礼装を身に付けるように、礼節が重んじられるお茶席では格の高い装いが必要となります。
一方、気軽な集まりでは比較的カジュアルな装いでOK。
何よりお茶はもてなす側、もてなされる側が互いに心を通わせ、和む場。 そのため場の雰囲気を察し、全体の調和を考えた装いが求められます。そこでどんなお茶席にどんな装いが適切なのか考えてみましょう。
茶事は正式なお茶会のこと。
湯を沸かす炭を熾す(おこす)ことから始まり、食事(懐石)、濃茶、薄茶と進む、 いわゆるお茶のフルコースです。そのためお客さまの席入りから終了まで4〜5時間かかることも。
正午の茶事、暁の茶事、夜咄(よばなし)の茶事など催しはいろいろありますが、 いずれも少人数で行われ、まさにお茶を楽しむ茶会の真骨頂です。
こうした茶事の装いは会の趣向や季節、時間にもよりますので、その場に相応しい取り合わせを考えたいものです。
初釜は新年のお祝いのお茶会。
新しい年に初めて釜に火をかけることから初釜と呼ばれます。 こちらも茶事と同じく、食事を伴うフルコースのお茶会となります。
年が明け、新たな気持ちで臨む最初のお茶会ですので、晴れやかな装いで参りましょう。
品格のある色留袖、柄付けがたっぷりとした訪問着や付け下げ、またお嬢さまなら振袖を着用されるのも華やかでよいでしょう。
帯は質感のある織りの袋帯を。古典柄や有職文はもちろん、お正月らしいおめでたい柄、またその年の干支にちなんだ柄なども楽しそうです。
このほか初風炉、口切りなど、季節に応じたお祝いのお茶会も その時節に応じた正装を心掛けて。
お茶を楽しむには事欠かない日本の文化。 風光明媚で細やかな四季の移ろいのある自然環境、そして人々の培ってきた生活の知恵や楽しみ。 そうした様々な趣向を取り込んだのがテーマ茶会です。
例えば春の花見、夏の蛍狩、秋の月見、冬の雪見。
行事でいえば雛祭や端午の節句、七夕や盂蘭盆会(うらぼんえ)。 西洋から入ってきたハロウィーンやクリスマスなども取り込んで、独自のお茶会にしてしまうという、なんとも心踊る催しです。こうしたお茶会では装いの準備も楽しみですね。
春ならば梅や桜のモチーフ、夏は花火や秋草、秋は実り豊かな果実や紅葉。冬ならは雪輪や星、ツリーやサンタ柄なども。
お茶席なのできちんと感を忘れず、着物と帯の格の釣り合いも考慮して臨みたいものですね。
大寄せのお茶会は茶事を簡略化したもの。
不特定多数の人々が参加できるので「大寄せ」の名があり、お寺や日本庭園のような広い場所で行われます。
お菓子と薄茶だけのお席と、点心という軽い食事にお菓子と薄茶、または濃茶の付いたお席などがあります。
多くの人が集まる気軽なお茶会ですので、装いは比較的カジュアルなものを。 落ち着いた色合いに、古典紋様などが散らされた飛び柄小紋、また江戸小紋などがよいでしょう。
帯は織りの名古屋帯や袋帯、また染めの名古屋帯や洒落袋を合わせて。
お茶は習っていないけれど、お誘いを受けて何を着ようか悩んだら、こうした装いがおすすめです。
仲間うちで集まる気軽なお茶会もカジュアルな装いで楽しみましょう。
お稽古ならば普段の着物として着慣れているお手持ちの着物、また柔らかものの小紋や江戸小紋がおすすめです。
所作を身に付けるため立ち座りが頻繁なので、動きに沿う、滑りの良いものがよいでしょう。また水濡れが気になったり、水屋のお仕事の多い日などはポリや合繊の着物も便利です。
帯は織りの名古屋帯や袋帯、また季節感のある染帯を合わせると素敵です。
いろいろ例を挙げてみましたが、ではいざお茶会へとなった場合、 様子や勝手が判らないと何を着て良いか悩みますよね。
そんな時、一枚あると便利なのが色無地と江戸小紋です。
(詳しくは過去コラム「礼を尽くした装いで」をご覧ください)
色無地は生地に光沢のある綸子や緞子なら地紋が浮き立って華やかな印象になります。対して光を抑えた縮緬地や紋意匠なら華美を避け、控えめな印象になります。 色はお顔映りやご年齢を考慮してお選びになると良いでしょう。
江戸小紋は三役(鮫、行儀、角通し)や五役(三役に加えて大小霰、万筋)の定め柄がフォーマル度も高く便利です。一方で季節感や風物詩を文様にしたいわれ柄をシーンに応じて装うのもお洒落ですね。
このような着物の便利さは帯合わせで変化を楽しめることです。
お茶席では座って所作することが多いので、帯は案外目立つもの。 その帯を際立たせるのも地紋や柄が邪魔をしない色無地、江戸小紋の素晴らしいところです。
お茶の世界では有職文や名物裂などが大切にされますので、こうした柄付けのスタンダードな帯を合わせれば安心ですね。
また別途社交着として着用する場合は、お好みの帯を合わせてご自身の個性を際立たせてくださいませ。
また、色無地、江戸小紋ともに家紋を入れるとさらに格高になりますので、一つ紋を入れておくと 便利でしょう。
リユースのお着物の場合には、ご自身の家紋とは異なる紋が入っている場合が殆どかと存じます。
繍い紋の場合には付け直すことも可能ですが、母方父方、婚家等様々な紋の着物がございますので、 お茶の場面ではさほど気になさらなくてもよろしいかと思います。
※尚、リユースのお着物に時折みられる 「つぼつぼ」紋は紋許が必要ですので、こちらはお避けくださいませ。
流派や先生のお考えによっても装いの幅は異なってまいります。 基本的なところを押さえた上で、先生や社中の方にご相談なさることも大切ですね。
きもの青木 でもしばしばお問い合わせをいただく、お茶のきもの、あれこれ。
これからはコーディネートなどを取り入れながら様々な角度からご紹介してまいりたいと思います。
銀座きもの青木・オンラインショップや銀座店舗では、お茶席に安心してお使いいただける着物や帯、帯締め、帯揚げのほか、数寄屋袋、バッグ、草履などの小物もご用意してございます。
オンラインショップでは、お茶席におすすめの品々をこちらのページ《お茶席のきもの》で一堂に集めてご紹介しております。
ご自身のお茶ライフを満喫できますよう、ぜひきもの青木 をご利用くださいませ。
※2023年3月発行
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