今日は着物で。vol.6 悉皆屋さんをご紹介します

「悉皆屋(しっかいや)さん」について、皆さまはどの程度をご存知でしょうか。
「悉皆」とは「ことごとく、すべて」という意味ですが、その通り、着物に関することの全てを相談できる場所なのです。

「色無地に紋を入れたいのですが…」「裄を直したいのですが…」
このようなお問い合わせを店頭やメール等で頻繁にいただきます。 残念ながら青木では、基本的にお直しやガード加工等のお手入れは承っておりません。お手数をお掛けしますが、お客様には商品をご購入後に個々でご相談をお願いすることになるのですが、そんな時の強い味方が、今回ご紹介する「悉皆屋さん」です。

日本橋店 店長の庭野さん

きもの青木 で自信を持ってご紹介させていただいております悉皆屋さんが、「きものトータルクリニック吉本」さんです。
先日、日本橋店にていろいろなお話しを伺ってまいりました。店長の庭野さんが、私の拙い質問にひとつひとつ丁寧に答えてくださいました。

どのようにご相談したらよいのでしょうか?

先ずは電話、あるいはホームページのLINEにて予め簡単なご相談内容を伝え、来訪の日時を予約していただくとスムーズにご相談ができるそうです。 予約がなくても受け付けてもらえますが、予約をされた方がゆっくりご案内いただけるようです。また、LINEですと写真を簡単に添付できますからお勧めです。

吉本さんのお店では、職人さんが作業なさっている現場で直接お客様からお話を聞き、作業内容についても職人さんから説明していただけます。 実際に作業する方からプロの視点でのお話を伺えるので、安心感も格別です。

料金や納期についてはいかがでしょうか?

基本的にはお仕立て、紋入れ、洗いに関しましては京都の本社にて、日本橋のお店では「染み抜き、やけ直し、汚れ落とし」をなさっていらっしゃるそうです。

納期につきましは、「紋入れ」「お直し」等は基本的におおよそ一ヶ月半から二ヶ月ぐらいとのことですが、お着物の状態や受注の混み具合によって追加のお時間が掛かることもあるようです。 また、着用したいお日にちが迫っている場合は、本社の状況等を確認しながら、 できる限りご希望に添えるように努力して下さるとのことですので、是非ご相談ください。

また、初めて悉皆屋さんに行く時にドキドキしてしまうのが「費用」ですよね。お尋ねしましたところ、 「事前見積もりやご提案は必ずいたします。また、お見積り確定後の追加は無いように予めしっかりチェックしますので、ご依頼いただいてからの追加のご費用はありません」とのことです。

「職人の手作業ですので、実際にはどのような仕上がりになるのか手を入れてみないとわからない部分もありますし、安価な仕事でもございません。大切なお着物を保証の無いまま預ける事になりますし、ましてや他店で綺麗にならなかったなど嫌な経験をされている方も多いので、着物歴の浅い方はどこに依頼したら良いかわからず不安になってしまうことも多いと思います。当社では、作業をする職人が直接店頭でお客様のお話を聞いて作業内容を決めたり、お見積りをすることで、どなたでも安心してご利用頂けますようにと心掛けております。」との言葉に、とてもほっといたしました。近くにこのように信頼できる悉皆屋さんが在ること、大切なお客さまにも自信を持ってご紹介できることをとても嬉しく思います。

紋を入れてほしいのですが…

先ず大切なのは入れてほしい「紋」の写真や、コピーをご用意ください、ということです。 洒落紋でしたらお好きなものをご用意いただければ大丈夫ですが、ご自分の家の正式な家紋をご存知でしょうか。私は、ついお墓で見る家紋を想像してしまいましたが、ご注意ください。白黒が反転している可能性もあるかもしれませんので、間違っていたら大変です。家紋を入れたいとお考えの場合には、先ずは正式な家紋をお調べください。

〈縫紋〉

お着物に入れてほしい家紋の写真やコピーをもとに、どんな種類の縫い紋にするかを決めます。 縫い紋には四種類あり、 「菅縫(すがぬい)」「まつい縫」「相良縫(さがらぬい)」「芥子縫(けしぬい)」 とそれぞれ、縫い方が違います。

価格につきましては縫いの細かさによっても変わりますし、紋自体が一般的ではない場合には下書きの紋を作る作業が発生するため、それぞれ変わってくるそうです。

既に入っている縫紋を一旦外して、新しく紋を入れ替える作業も可能です。

〈染め抜き紋〉

こちらもお願いできますが、着物の染料によっては色抜きが難しい場合もあるようです。実際に作業を行いながらのご相談とお考え下さい。

裄、身幅を出してほしいのですが…

どのくらい中に入っているかは、一部開いてみないとわかりませんが、出せる寸法に関してはその場でおおよそ、お答えが可能とのことです。 訪問着等の柄があるものに関しては、開いてみないと柄がどのように繋がっているかが 難しい場合もございます。

また肩からだけ出す場合はスジがでにくいのですが、肩、袖両方から出す場合は、 袖側にスジが残りやすくなってしまいます。 「スジ」と書きましたが、このスジとは「仕立ての際の折り筋」であったり、「縫い目の筋」のことです。

吉本さんでは必ず折れスジを伸ばしながら確認をし、スジが汚れていたり、ヤケていたり、 生地の色が違う場合も、スジ直し、ヤケ直し、そして汚れも落としていただけます。 襦袢との兼ね合いもありますので、直し方についてもご相談してみてください。

染みをつけてしまった場合はどうしたらよいのでしょうか?

まず、大前提として「何もせずに持ってきてください」そして 「できるだけ日にちを置かずに」とのことです。 青木にも「ファンデーションをつけてしまったのですがどうしたらよいでしょうか?」とのお電話がたまにございます。汚れにもいくつか種類がございますが、下記の表を目安にお早めにご相談ください。

汚れの種類とタイミング
血液、体液、ステーキの肉汁等タンパク質のもの一ヶ月以内に
紅茶、コーヒー、お抹茶等
(タンニンが含まれるもの)
できるだけすぐに
汗、ファンデーション等シーズンオフのお手入れの際に

※紅茶、コーヒー、お抹茶等はタンニンが含まれるので「染め」られてしまいますので「できるだけすぐに」お出しください

そして一番大事なことは「濡れたおしぼり等でこすることは、絶対なさらないでいただきたい」とのことです。 ちょうど取材時に擦ってしまったお着物がございましたが、表面が白く毛羽立ち、生地が傷んでしまったとのこと。素人目には色をかけたらよいのでは?と思いましたが、やはり一度生地が傷んでしまうと、修復は難しいようです。

ということですので「万が一、お醤油など食べこぼした際は、乾いたハンカチやタオルで押さえて吸い取る」のみ。そして、「悉皆屋」さんまでお持ちください。あとは職人さんにお任せ!!これ、試験に出ます(笑)!!これだけは、着物を着る際に覚えていてくださいね。

職人さんにお任せください

いかがでしたでしょうか。
「悉皆屋さん」を身近に感じていただけましたでしょうか?

実は、この取材の前に、来年成人式の娘の振袖の振りの長さのことで相談をさせていただきました。初めての「吉本」さんへの訪問に緊張していたのですが、優しい笑顔で対応していただき、先ず、丁寧に着物の寸法を図り、娘の寸法を確認し、実際に着用した上で振りの柄等を確認しながら、今回は切らずに中に織り込んで長さを調節するようにしていただきました。

こんなことができるのか?と思うのと同時に、今度は娘にこの長さだったら当日気をつけること、また写真を撮る時のアドバイスをいただき、緊張しがちな娘も嬉しそうにおしゃべりさせていただきました。扉を開ける時の緊張はどこへやら。本当に「悉皆屋さん」は着物についてなんでも相談できるところだなあ、と嬉しい気持ちでお直しをお願いしてきました。

お手持ちのお着物、青木で購入したお着物、悩んでいたら「案ずるより産むが易し」!
先ずは「きものトータルクリニック吉本 日本橋店」さんにご相談してみてはいかがでしょうか?

きものトータルクリニック吉本 日本橋店

私は都営新宿線、浜町の駅から歩いたのですが、「A1出口」から歩いて2分ほど。「染み抜き 吉本」の看板が見えたらもう安心。
優しい職人さんたちが相談にのってくださいますよ。

*交通便のよい南青山店もございます

南青山店は東京メトロ表参道駅から徒歩10分!日本橋店と同様のサービス内容でいろいろな相談に乗ってくださいます。南青山店の詳細はこちらからご覧くださいませ。

銀座店 田山

※2024年1月発行
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