日が変わり、月は巡り、お茶の世界にもまた新しい季節がやってまいりました。
春を迎え、天井から釣った釜が風にかすかに揺れる様を楽しむ3月。
その釣釜(つりがま)も4月に入ると透木釜(すきぎがま)に取って替わられます。日に日に暖かさが増すため、炉の火が次第に鬱陶しく感じられるこの時期。そのため透木を用いて羽のついた平釜を炉縁に掛け、炉中の火が見えないように覆います。少しでも客を火から遠ざけようとする心遣いなのです。
そして4月の末には炉塞(ろふさぎ)が行われます。
炉開き以降、冬の間使っていた炉を炉蓋や畳を入れて塞ぎます。かつては陰暦3月の晦日に行う慣わしでした。炉の風情を惜しむ心から、名残と称して茶会が催される事も。そして再び風炉の出番がやってきます。
その5月初めに迎えるのが初風炉(しょぶろ)。
まさに新茶の季節である八十八夜に当たります。炉の時期とは道具や趣も変わり、今度は火や蒸気の熱を抑えて快くお茶が戴けるよう工夫がなされます。風炉にかける釜は小ぶりになり、茶碗も浅めに。花入れには涼やかな籠も用いられ、香合は陶磁器に替わって木製や漆器へ。
若葉が生い茂る、清々しい新緑の季節。夏へと向かうお茶はこうしてしつらえも改められ、また新たな営みが始まります。
暖かさから暑さへと向かうこの時期、更衣の方も気になりますね。
それではお着物の準備を始めましょう。