きものコーディネート講座vol.3:この夏は「ゆかた」の一歩先を目指して。

着物歴の浅い私、きもの青木に入社して初めての夏を迎えます。
この夏こそは、花火大会やお祭りだけではなくて、もっとゆかたで色々なところへのお出掛けを楽しみたいな、みんなよりちょっと小粋に着こなしたいな、と今から心踊らせています。
でも、ゆかたにもいろいろとルールがあるのかしら・・・?
そこで今回は、着物上級者の大先輩から手ほどきを受けながら、
きもの青木がおススメする〈ゆかた〉の一歩先の着こなしをご案内していきたいと思います。

「よく使われる"浴衣"という字はそもそも当て字で、湯帷子(ゆかたびら)の略語なんですね。元来は文字の如く、湯上がりにまとう〈くつろぎ着〉でした。ですから吸水性の良い綿素材が基本で、夕方以降ごく近所までというのが許容範囲とされていました。現代においては、ジーンズが作業着からお洒落着にまで進化したように、時代と共に〈ゆかた〉で出かけられる場所はぐんと広がりましたね。それでも街の中でお洒落着として楽しむ場合は、とにかく"寝巻き風"な要素を徹底的に取り除いていくことが大切だと思いますよ。」

「ポイントとしては3つ。素材、色や柄行き、そして帯や小物合わせでしょうか。」

"ハリ" のある上質素材でキチンと、"透ける"素材で清涼感を。

「素材として一番馴染みがあるのはやはり綿素材ですよね!自宅で手軽にお手入れが出来ますし。」
「そう。綿の中でも、綿コーマと呼ばれる平織りのものがもっとも一般的ですね。吸湿性もあって肌に柔らかなのですが寝巻き風にならないためには、シャキッとした"ハリ感"を持っていることが大切です。ヘタらない上質な生地を選びたいですね。ゆかたの一歩先を目指すのであれば、綿100%でも織り方に工夫がされている綿絽や綿紅梅は、夏着物の特徴でもある"透け感"があり、帯や衿元によってはワンランク上の着こなしが楽しめますよ。」
「綿は汗を吸う一方で、炎天下で汗ばむときにはちょっと重たく感じることもあるのですが・・・。」
「では、麻を一度トライしてみてはどうかしら。
麻はざっくりとした"ハリ"のある素材感で肌にまとわりつかないし、綿より"透け感"もずっとあります。シワが気になるようであれば、糸に強い撚りをかけている縮みであればさほど気になりませんよ。その代表格が小千谷縮。小千谷縮には先染め、後染めと様々なバリエーションがあり、小紋感覚で着こなせるものも多くあります。麻も基本的にはご自宅でお手入れ出来ます。着れば着るほどふわりとしなやかに馴染む特性も心地よいですよ。 麻以外のおススメは、もうほぼ夏着物と言ってもいいもので絹紅梅。絹ならではの羽のように軽い着心地に、シャリ感と強い"透け感"で見た目通りの涼やかさ。絹物にしてはお手頃なのも嬉しいですね。是非、街での大人のお洒落着として楽しんで下さい。絹紅梅のお手入れはプロにお任せしてくださいね。」
素材別の透け感画像を用意してみました。
こうやって並べてみると、風を通す素材感が分かり易いですね!
① 綿コーマ:
太さにムラがない強い細番手の綿糸を使って平織りにした、艶のある柔らかな肌触り。
② 綿絽:
「絽」は緯糸数本おきに隙間を作りながら織り上げる夏の代表的な生地。
綿の糸を「絽」に織り上げた素材。綿コーマよりワンランク上。
③ 綿紅梅:
細い綿糸の間に太い綿糸を織り込み、格子状に凹凸を織り出した表面感豊かな素材。
凹凸つまり勾配があることから、転じて紅梅と名付けられる。綿のゆかたの最高級素材。
④ 麻縮:
縮みとは撚りが強い経糸で織った布を湯もみすることで「しぼ」を出した織物。
麻の糸で織り上げた代表的な夏素材のひとつ。
⑤ 絹紅梅:
綿紅梅と同じ手法で、細い絹糸の間に経緯とも一定間隔で太い綿糸を織り込んで格子状の畝がある生地。
透け感が非常に強く、ゆかたの最高級生地とも言える。

着ていきたい場所をイメージしよう。

「生地の特徴が分かったところで、色や柄、染めなどに注目してみたいと思います。ついつい自分の好みのものを選んでしまいがちなのですが。」
「柄や染めによって、ゆかたらしく着こなすのか、それとも小紋風に着こなすのか、実は着こなしの岐路にもなるので、着る目的をちょっと考えてみて下さいね。大胆な柄行きは花火大会などでも艶やかに映え、細やかな文様は半衿や名古屋帯を合わせると夏着物さながらの趣になります。

また、基本的には染めの技法が緻密で高度なものになるほど格が上がります。例えば麻でも染めの技法によって、絹紅梅より格が高いものもありますので、生地と染めはセットで考えて下さいね。・・・とは言っても、あまり難しく考えすぎずに、着ていく先にふさわしい着こなしを心がけることが大切だと思いますよ。

色に関しては、顔映りの良さなど人それぞれに似合うものはもちろんありますが、目にも涼やか、というのが夏着物の基本であり、周囲への配慮がなされているという意味でも"粋"なのではないでしょうか。」

一枚のゆかたを何通りにも楽しむ

「綿のゆかたに半幅帯を合わせるということが多かったのですが、同じゆかたをワンランク上に着こなしたいのですが。」
「お話してきましたように、ゆかたと言っても幅広くありますので、まずはそのゆかたの持ち味を生かすということはとても大切です。コーマ地に大胆な柄行きでしたら、やはり半幅帯に素足、というのが似合いますね。でも、着こなしで簡単に変化をつける事も楽しみのひとつ。例えば、帯を名古屋帯にしてみるだけでぐっと雰囲気が変わります。半衿をつけていない場合には足袋は履かなくてもいいのですが、足袋を履くだけで〈きちんと感〉が上がりますし、出先でどこかのお宅へ上がる場合など、裸足はやはり失礼になりますから、お出かけ先を考えて足袋を履くかどうかは考えてみて下さいね。」
半幅帯、裸足の合わせ
名古屋帯、足袋の合わせ
「名古屋帯に、さらに半衿をつけるともっと街着らしさが出ますね。半衿をつけたら足袋をお忘れなく。バッグなども衿や帯のチョイスと合わせて、全体のバランスがちぐはぐしないようにしましょう。」
半衿なし
半衿あり
「イメージが湧いてきました!」
「最後に、ゆかたをちょっとグレードアップさせるのにふさわしい帯を教えて下さい。」
博多の半幅帯
「最初の一本であれば、博多帯をおススメします。シャリッとした手触りの博多帯は締め心地がよく、出掛け先で動き回っても緩みにくいですよ。ゆかただけではなく、小紋や夏紬とも相性が良いですし、色によっては夏だけではなく通年活躍する万能選手です!博多織の中でも、紗の入った八寸帯は、夏にしか着用できませんが、より軽やかでゆかたから夏着物まで幅広く活躍するので、こちらもおススメです。博多帯は半幅など、バリエーション豊富にあるので、変わり結びなどでさらに"粋"な装いを楽しむこともできますね。」
「涼しい着心地を求めるのであれば、麻の帯が断然おススメです。麻はざっくりとした地風で、こちらも締め心地が良く初心者にも扱いやすいです。色や柄も豊富なので、ご自身の個性を発揮しやすいのも特徴です。」
小千谷縮の帯
麻絽の帯
「他にも粗紗の八寸のように芯が入らないものも軽やかで風を通しますし、表情豊かな風合いが楽しめますね。 絹紅梅のように小紋感覚で着られるようなものは、夏着物と相性の好い絽塩瀬を合わせてみても上品ですね。」
粗紗八寸帯
絽塩瀬の帯

〈ゆかた〉とひとことで言ってもなかなか奥が深いのですね。大人としての品位を大切に、この夏は一歩先の〈ゆかた〉の着こなしを楽しみたいと思います。皆さまもいつもの着こなしをちょっぴりアップデートして、〈ゆかた〉の一歩先へ、いかがでしょうか。

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※2018年5月発行
※当サイト内の文章、画像等の内容の無断転載、及び複製等の行為は固くお断りいたします。

きものコーディネート講座vol.2:春を運ぶ朗らかな装いを

立春を迎え、少しずつ陽差しも明るくなってきます。梅や水仙も咲き始めて、季節が春に向けて一歩一歩進んでいることを実感しますね。きもの青木の商品も春いろ一色になってきました。
あれこれ勉強中の新入社員達から相談を受けながら、今回は春らしさを楽しむ装いをご案内してまいりたいと思います。
「春の季節柄には、具体的にどんなものがあるのでしょうか?」
「1月〜4月にかけて梅や水仙、菜の花、木蓮、桃、レンゲ、土筆、ミモザ、チューリップ、そして桜など、様々な花が順々に咲きはじめますよね。このような春に咲く花々や蝶、そして桃の節句柄などが代表的です。ただ、春に咲く花と一口に言ってもそれぞれに花期は違いますから着物のお洒落は花期よりもひと足早め、できれば着用は『咲ききってしまう前まで』と覚えておいてください。そうは言っても南北に長い日本、場所によって季節の訪れにも幅がありますから、そんなに神経質にならなくても大丈夫ですよ。」
「桜の着物や帯に憧れますが、選ぶ時に気をつけることは?」
「日本人が大好きな桜、写実的に描かれたものから大胆にモチーフ化されたものまで表現も幅広いですね。花期の短い桜ですが、満開の花枝・花吹雪・花弁だけのものなど、これほど様々な描写がなされる題材も珍しいのではないかと思います。桜の柄については拘る方が多いだけに意見の分かれるところですが、満開の頃ならば、写実的な描写のものは花吹雪や花弁だけの画を選ぶなど、少しだけ時期を先取り。モチーフ化された柄行きでしたら、あまり季節を気にせずにお使い頂いて良いのではと思いますよ。」
「着用の季節が限られる柄行きの着物や帯は、初心者にはちょっと難しいような気がしますが・・・?」
「皆さん、着るときを逃してしまうのでは?という心配をなさるようですね。でも季節柄は初心者の方にこそおすすめしたいと思います。気に入った柄行きでしたらその季節が待ち遠しく楽しみになりますし、一年に一度は表に出してあげなくちゃ!と頑張りたくなるもの。きっと着物を着る機会が増えると思いますよ!」
「季節感のない無難な着物と帯しか持ち合わせていないのですが・・・」
「小物使いだけでも随分と印象が変わりますよ。挿し色としてはシャーベットトーンを取り入れてみてはいかがでしょうか。清々しい黄色、オフホワイト、淡いピンク、優しい黄緑系などの彩りは色そのものが春を感じさせますね。また、春花の柄が入った帯揚げや半衿などでも春らしさを楽しめますし、振りからちょっと見える襦袢に春色をしのばせてみるのも、楽しいですね。」
「可愛らしくなってしまう春色や柄行きに少し抵抗があるのですが・・・」
「お洋服の場合、シックで大人っぽい装いが好きな方には、春らしいカラーや柄行きが苦手の方も多いですよね。でも和装ではそれが当てはまらないから不思議なところ。面積の少ない帯締めや帯揚げ、帯留めなどワンポイントに春を取り入れるだけでもさりげない季節のお洒落が楽しめますし、桜の柄ひとつとってもさまざまな手法により趣が全く異なりますので、お好みに合う意匠が必ず見つかると思います。お好きな作家さんの作品から探し出してみる、というのも楽しいのではないでしょうか。」
「普段は着物を着ない方でも、春の行事では着物を着たいのですが・・・と、よくお客様から相談を受けるのですが・・・」
「そうですね。特にお問い合わせが多いのはお子様の卒入学式などでしょうか。
まず卒業式では〈感謝〉の意も含まれている為、華やか過ぎる装いは控えた方がよいですね。落ち着いた色味の色無地や江戸小紋に袋帯を合わせた装いなどが、礼を尽くした母の装いとして好ましいのではないでしょうか。出来れば紋付きがおすすめですが、今はさほど気になさらなくてよろしいのではと思います。
入学式に関しては春らしい色味の色無地や江戸小紋、春の柄行きが穏やかに描かれた付下げなどがおすすめです。あくまで主役はお子様ですので、豪華な訪問着などはお避けになられた方が安心です。」

「ただ、地域や学校の校風などによっても傾向が異なりますので、周りの方がどのような装いをされるのか、少し様子をリサーチなさってからお考えになると良いかと思いますよ。また、お祝いのパーティーなど晴れやかな場面では、春らしい季節柄の訪問着で華やいだ装いを存分に楽しんでいただきたいですね。」

具体的なコーディネートをご紹介いたします

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シンプルな着物には春帯で変化を楽しんで。

  • #01 優しく可愛らしい春:

    桜花と花弁のみを控えめに散らした染め帯です。綺麗な苗色もまさに春を告げるお色目、着物の落ち着いた色味を優しく引き立てています。どんな着物も春衣に変えてしまう、そんな素敵な力を感じさせる一点ですね。
  • #02 はんなりとした春:

    絞りで象られた大ぶりの桜一輪がお太鼓を飾る個性的な染め帯です。黒と白にほっそりと赤を効かせた、はんなりとして女性らしい趣きのお品。小物で花の色を添えて、心に残る春の装いです。
  • #03 華やかな春:

    落ち着いた色遣いながら、デザイン性の高い華のある帯ですね。枝や葉は地色に溶け込ませ、大ぶりの桜花がより強調されています。こちらでは濃い色の帯締めでシックに引き締めていますが、明るいお色目を使って頂くとまたすっと趣きが変わって新鮮ですよ。
#01 優しく 可愛らしい春
【帯 K-4696】
#02 はんなりとした春
【帯 K-4709】
#03 華やかな春
【帯 L-3367】
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落ち着いた大人の春らしさをとり入れて。

  • #01 空木さんの穏やかな春:

    高久空木さんの塩瀬地の染め帯です。優しい風に乗ってふわりと舞い降りた蝶の姿に穏やかな春を感じさせますね。シンプルながら滲みが美しい色彩と完成度の高い構図が作家作品ならではの存在感を見せてくれます。蝶のモチーフならば早春から晩春まで長くお使い頂けますね。
  • #02 風情豊かな大人の春:

    力強い水の流れにはらりと散った桜花が浮かぶ染め帯です。鮮やかなグリーンの帯締めを合わせて春らしく瑞々しい表情を。装いを凛と引き締める黒地の帯は、淡色から中間色の着物ならどのような地色も綺麗に調和します。散りゆく桜の花ならば、比較的長くお楽しみ頂けますね。
  • #03 清々しい春:

    名物裂の笹蔓文は特に季節の縛りの無い格調高い意匠ですが、淡い彩りが清々しい印象です。淡彩の着物や春色の小物を合わせれば春らしく、焦茶など濃地の着物に載せれば秋のイメージの装いに。着物や帯揚げ・帯締めで季節感も自在です。
#01 空木さんの穏やかな春
【帯 K-3641】
【バッグ G-854】
#02 風情豊かな大人の春
【帯 K-3757】
【バッグ G-852】
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小物使いで変化を楽しむ。

春いろのグラデーションが美しい帯締めや帯揚げを合わせて、やさしい春の表情が楽しめます。
いかがでしたでしょうか。今回の春の装い講座は、この辺りで。
最後に、きもの青木がオススメする春のアイテムを少しご紹介致します。

※2018年2月発行
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芭蕉布 を着こなす — 丹精をこらした逸品 vol.07

上質な糸をとるために丹精込めて糸芭蕉を育て、皮を剥ぎ、糸を績み…全て手作業による数多くの工程を経て、芭蕉は布のかたちとなります。また一反の着物を織るためには、糸がとれるようになるまでに2~3年かかる糸芭蕉を200本要します。気の遠くなるような時間と労働の積み重ねを人に課す布ですが、織り上がり衣となったその時から、夏衣としてこの上ない特性で人を護り続けます。戦後荒廃した芭蕉布づくりでしたが、人間国宝 平良敏子さんが人生を賭した芭蕉布復興の歩みは良く知られるところですね。国の重要無形文化財にも指定される沖縄の至宝、その力強い美しさをぜひご覧下さいませ。

強い張りとひんやりとした手触りを楽しみながら、芭蕉布を着こなす。
それは着物を愛する方にとって、一つの到達点かもしれません。

【着物1929】

テーチ(車輪梅)の縞絣に藍の緯絣を重ねた端正な幾何文様の着物

【着物1922】

トゥイグワー(小鳥) とターチヒキサギーを段に配した着物、卓越した絣技が冴える一枚です

【着物1904】

経縞に絣を絡めたシンプルな綾中柄は、力強い縞に愛らしい絣が好バランス

【着物1560】

ふんわりと優しい風合いに糸質の良さが際立つ、トーニーハナアーシー柄の反物です

着物はちょっと上級者向きかしら、と思われる方も
帯でしたら気軽に芭蕉布の魅力を楽しんで頂けますね。

土の香りがするような、素朴な絣柄に心和む名古屋帯です。

元気に飛び交う小鳥の姿を絣にかえた大らかなトゥイグワー柄の名古屋帯。

太い横段の間においた幾何文様。素朴ながら布の個性が装いに力を与えます。

沖縄の豊富な植物染料を用い、細やかな花織りを取り入れることで美しさに洗練を得た八寸名古屋帯。涼しさも抜群です。

野趣豊かな地風に、素朴な緯絣の幾何文が手しごとの優しい温かみを伝えます。

シンプルなロートン織、爽やかな淡彩、やや太めの糸遣い。喜如嘉とはまた少し趣きを異にする桶川米子さんの芭蕉布です。

芭蕉布は、先回の宮古上布などと同様に希少価値の高い染織品の代表格です。近年の喜如嘉の芭蕉布の生産反数は130反とのことですが、着尺のみとなれば更に反数は限られます。青木でご紹介しております芭蕉布はリユースではございますが状態や糸質、お柄をしっかりと吟味いたしております。今年はとりわけ素晴らしいお品が入荷いたしました。ぜひこの機会にお手に取って頂きたく思います。

青木では様々なタイプのお品を比較しながらご覧頂くことができます。 こちらからもチェックしてみてくださいね。

※2017年7月発行
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宮古上布 深い琉球藍の気品 — 丹精をこらした逸品 vol.06

先回ご紹介した八重山上布と同様に、薩摩藩の貢納布制度によって厳しく管理された過酷な歴史を経て、洗練を極めた布として今に伝えられる宮古上布。温暖な島の気候を利用し苧麻を育て、糸を績み、締機で絣を締め、琉球藍で染める。経緯共に手績みによる極細の糸を用い、乾燥に弱く切れやすい糸を調整しながら点のような精緻な絣を合わせ、織り上げる。更に澱粉糊で糊付けをし、木槌で丁寧に砧打ちを行う。どの工程も気を抜くことのできない恐ろしく難儀な仕事の連続ですが、惜しみ無く費やされた手間や時間の結晶はやはり、圧倒的な美しさで見るものを魅了します。

宮古上布の真骨頂、気品香る精緻な絣

【着物1911】

絣の技、織りの技が存分に発揮された宮古ならではの迫力ある逸品

【着物1874】

蝋引きしたような、と形容される砧打ちの光沢がエレガント。宮古の紺上布の王道をゆく一枚です。

【着物1574】

手で描いたような滑らかな描線が全て、点絣の地抜きで表現されています。究極の細やかさだからこそ可能な表現ですね。

【着物1256】

アンティークを思わせる大胆で複雑な文様も、狂いの無い点絣の地抜きで見事に表現。

シンプルな幾何文はより身近な印象

【着物1871】

宮古ならではの点絣を綺麗に並べた立涌文。上記の宮古の面々に比べると、ちょっぴりカジュアルな雰囲気が親しみ易い一枚です。

【着物1603】

数え切れないほどの点絣で松皮菱を表現しています。宮古らしい技術を駆使しながらも、すっきりとした幾何文がモダンです。

宮古上布の最盛期は大正期から昭和初期

アンティークと呼ばれる宮古上布には、今では見られない大胆な意匠や可愛らしいモチーフが見られます。本来とても丈夫な苧麻素材。まだまだ現役で頑張れます!

日本工芸会 正会員 新里玲子さんの作品も揃っています♪

紺上布のみを追究していた従来の宮古上布の作風から離れ、琉球王朝の頃に存在した色とりどりの上布を蘇らせた、日本工芸会正会員の新里玲子さんの作品たちです。上質な苧麻糸にのせた清澄な彩りやモダンな表現によって、宮古上布に新たな可能性が広がりました。
手績みの苧麻糸を用いたひんやりとしてしゃり感のある九寸帯。芯が入りますので夏の初めの単衣時期から夏を通してお使い頂けます。

経緯手績みの糸を用いる宮古上布。その貴重な技術は国の重要無形文化財にも指定されています。 手機で丹念に織り上げられた最高の糸が運ぶひんやりとした蝕感、ふわりとした心地良い張り、全てに酷暑から着る人を守る知恵が詰まっています。 上布の女王と呼ばれるに相応しいエレガントな夏衣、そのかけがえのない美しさにも拘わらず、経緯手績みの上布は年々大幅に生産が減少し、存続が難しくなっている染織品の代表格です。どうぞ身に纏い、街を歩き、このような布が今なお私たちの前に在る幸せをご実感下さいませ。

青木では様々なタイプのお品を比較しながらご覧頂くことができます。 こちらからもチェックしてみてくださいね。

※2017年7月発行
※当サイト内の文章、画像等の内容の無断転載、及び複製等の行為は固くお断りいたします。

清々しい風を運ぶ 八重山上布 — 丹精をこらした逸品 vol.05

夏の織り、といえば真っ先に名前の挙がる上布。とりわけ沖縄には宮古の藍上布、八重山の白上布という素晴らしい苧麻の布が古くから織り継がれています。古くから薩摩藩の貢納品として厳しく管理され、磨き抜かれた技術が、いま私たちに清々しい風を運んでくれます。

草木染めや括り染めによる大らかな色柄の帯たち

かつては殆どが白地に紅露を染料とする薄茶の絣であった八重山上布ですが、現在では豊富な植物染料を利用した彩り美しい品々が目を楽しませてくれます。
帯でしたら梅雨明け前の単衣時期から、夏を通してお使い頂けますね♪

【着物1242】

昔ながらの白地に茶系の絣、八重山上布らしい着物です。整然と並ぶ糸巻き柄が端正な趣きのお品、真夏の陽射しに凜と映える一枚ですね。

【着物524】

淡いベージュ地に井桁やトーニーの絣を置いた着物。さっくりとして張りのある布に草木の穏やかな色が溶け込んでいます。素朴でナチュラルな表情のお品は、どなたにも優しく寄り添ってくれそうですね。

素朴な糸味に野趣を残した八重山上布。
昔ながらの白上布の清々しさ、色上布の鮮やかさ、あなたはどちらがお好みですか。

この時季は、少しずつ八重山上布が登場します。
今年こそは上布を、とお考えの方、ぜひこちらからもチェックしてみてくださいね。

※2017年6月発行
※当サイト内の文章、画像等の内容の無断転載、及び複製等の行為は固くお断りいたします。

夏着物を身近に…小千谷縮のいろいろ — 丹精をこらした逸品 vol.04

絣から無地・縞、小千谷縮もいろいろ

5月も後半となれば、そろそろ麻ものにも手を伸ばしたくなるこの頃ですね。ここ何年かの間にすっかり夏の定番となった小千谷縮、麻特有の涼しさに加えてお手入れの気軽さやお手頃な価格ということもあり、初心者の方も着慣れた方にも大人気です。少し汚れを見つけても、その部分だけつまみ洗い、なんてことも可能です。水に強く丈夫で着込む程に柔らかくなる麻の特性からも、日常にどんどんお召し頂きたいですね。

*きもの青木が反物から仕立てた小千谷は、お家で手洗い可能な仕様です。 気になる時に衿や袖口など気になる箇所をささっと洗っておく、汚れた ところはすぐに処理しておくと、いつも気持ち良くお召し頂けます。

【着物1583】

一見経緯絣に見えますが、特殊な捺染脱色による絣柄です。 表裏織りによる絣と見分けの付かない仕上がりに驚かされますね。

【A-1983】

左と同じく捺染脱色による絣。絣を括り手機で経緯を合わせる工程が無い分、新品でもとてもお値頃です。

反物からのお仕立ても、小千谷なら気軽に

マイサイズで洗える仕立てにすれば、手放せない夏衣になりますね。最初の一枚にぴったりの格子や縞、無地の反物もご紹介しています。

すぐにお召し頂ける、シンプルな縞や格子

サイズが合うものがあれば、すぐにお召し頂けるお仕立て上がりは、やはり便利ですね。

お気に入りの柄もので、軽やかな気分を盛り上げる

数少ない小千谷縮の絵絣ものは、間違いなく夏の朗らかな気分をグンと楽しく盛りたててくれそうですね。

小千谷縮の帯揚げ

夏着物や麻帯に合わせて、帯揚げにも小千谷縮の涼感を取り入れてみませんか。きもの青木では、盛夏の装いを爽やかに引き立てるお色を揃えています。

番外編・・・【A-1464】 近江上布

こちらも長い歴史を誇る近江地方の上布。こんなに手を掛けた絣模様はすっかりみかけなくなってしまいました。

ぱりっとした麻、ワンピースやシャツで馴染んだ清涼感を着物でもぜひ!  夏着物の楽しさがぐんと広がります!

この時季は毎日いろいろな小千谷縮をご紹介しています。 こちらからもチェックしてみてくださいね。

※2017年5月発行
※当サイト内の文章、画像等の内容の無断転載、及び複製等の行為は固くお断りいたします。